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11/26 (火)

ご先祖供養のためお彼岸にすることは?服装、持ち物、手順etc. 知っておきたいお墓参りのマナー

お墓参りに行って「これでいいんだっけ?」と作法やマナーに悩んだことはありませんか? そこで、もうすぐやってくる春のお彼岸を前に、お墓参りで知っておきたい基礎知識を、マナーコンサルトの西出ひろ子さんに伺いました。

春と秋の2回ある、お彼岸の意味や目的とは?

お彼岸=お墓参りとイメージできても、その理由はぼんやりとしか理解できていないケースも。まずは、お彼岸の時期と目的をおさらいしましょう。お彼岸は、春と秋の年2回あります。春は3月の春分の日、秋は9月の秋分の日を中心とした前後3日間、計7日間がお彼岸です。

「初日を『彼岸の入り』真ん中を『お中日(おちゅうにち)』終わりを『彼岸明け』と言います。太陽が真東から真西に沈み、昼と夜がちょうど12時間ずつになるときです。そのため、暑さ寒さも彼岸までといいますが、季節の大きな変わり目に当たります」(西出さん)

そしてこのお彼岸というのは、年に2回しか無い、ご先祖さまのおられる場所に真っ直ぐ向き合える絶好の時です。仏教では、私たちのいる煩悩や迷いのある世界を“此岸(しがん)”、ご先祖様がいる悟りの世界(浄土)を“彼岸(ひがん)”と呼んでおり、此岸にいる私たちが善行を積むことで、彼岸へ渡ることができるとされています。また浄土思想では、極楽浄土は真西にあるとされているため、太陽が真西に沈む春分の日と秋分の日は、この世からあの世へと最も通じやすい日とされています。そして、このときに先祖供養を行うことで、ご先祖さまに喜んでいただけると考えられているのです。

お彼岸の期間中、お墓参りに行くのはいつがいい?

お彼岸とは、本来、覚り(さとり)への道、『到彼岸』から来ているそう。覚りとは成仏することですが、そのためには、六つの道(六波羅蜜)があります。その最初が、布施行です。この布施には、和願施(笑顔で接する)、眼施(優しい眼差しで接する)、言辞施(優しい言葉をかける)、身施(自分の体で奉仕する)、心施(思いやりの心)があります。

「いつも笑顔を忘れず、偏らない優しいまなざしと思いやりの言葉と行動で、何よりも相手の立場になって思いやる心を形にする真心マナーが、お彼岸には大切な行いのひとつとして通じます」(西出さん)

このことを念頭において、お彼岸とお墓参りに関するマナーを教えていただきました。

「まずお墓参りに行くタイミングは、お彼岸期間の中日である春分の日、秋分の日がベストとされていますが、期間中に行くことができれば、いつでも問題はありません。大きな霊園などは、土日祝日は込み合うことが予想されるので、日時をずらすことも一法です」(西出さん)。

ここで、『相手の立場に立つ思いやりの心』をマナーと提唱している西出さんは言います。

「お墓はご先祖樣と対話をする場所です。そこにご先祖様がいらっしゃるということではありません。有名な『千の風』の歌詞にもあるとおりご先祖様の立場に立てば『そこに私はいません』なのです。圓福寺の住職 小島雅道さんより『お墓という場所はご先祖様と対話できる場所であり、ご先祖様のご遺徳をしのび、思い出すところだ』と教えていただきました。このように、お墓の意義を知った上でお墓参りに行くとなお良いですね」(西出さん)。

なお、先祖供養というと夏のお盆も思い浮かびますが、お盆とお彼岸には大きな違いがあります。お盆は家に戻ってくる先祖をお迎えする行事ですが、お彼岸はこちらから先祖に会いに行く行事なのです。そのため、普段は疎遠でもお彼岸にはお墓参りに行けると良いですね。

お墓参りに行くときの服装は?

お墓参りの際の服装は、正装する必要はなく、普段と同じで大丈夫です。ただし、公共の場ということを意識し露出の多い服やサンダル、ヒールの高い靴、短パンなどは避けましょう。

「服の色は、原色は避け、オフホワイトや、ベージュ系、グレーなど、ご先祖様へのご挨拶や対話に相応しいと思われる落ち着いた色だと無難です。黒は喪のイメージを連想するとおっしゃる方もいらっしゃいますが、決してNGということではありません。しかし、お墓の掃除の際に汚れてしまうと目立つため、控える方が無難です」(西出さん)。

お墓参りに行くときの持ち物リスト

そして持ち物も大切です。お墓参りの際にはお墓の掃除も行いたいもの。そのために必要な持ち物もあるので、以下のリストを参考に揃えてみてください。

●お供え物…ご先祖様の好物の食べ物や飲み物、それらを置くための白い半紙
●お花一対…樒(しきみ)がベスト。花粉が墓石にしみこむため、本来切り花はお供えしない。生花を持参するときは、お参りを終えて持ち帰ると良い
●お線香…灰で墓石を傷めないよう、その成分にタブ粉や炭粉の入っていないもの
●豆ろうそく…墓石にろうそく立てがある場合は、長いろうそくは控える。石を焼いて墓石が割れたり黒焦げにしてしまう事例あり
●ライター…柄や風よけがついたものが便利
●軍手…雑草取りが必要な場合
●ゴム手袋…掃除での手荒れ防止
●雑草や枯葉などを入れるゴミ袋
●虫よけスプレー(必要であれば)

お墓参りでは清掃を行った後に手を合わせるもの。気後れしない服装と必要な持ち物を揃えて臨んでみてください。それらを意識した分だけ、お参り後は気持ちもさっぱりと整うはずです。

お墓参りのマナーと手順

いざお墓に着いた後に戸惑うことがないよう、お参り時に気をつけたい一般的なマナーや手順を知っておくといいでしょう。

1.お寺に着いたら、先ずはご本尊にお参りを(お寺に墓地がある場合)

「彼岸中、お寺では、彼岸法要を勤められることが多々あります。参加できれば良いのですが、案内が無ければ、先ずご本尊にお参りします。このとき、出来れば、お墓を普段お守り下さるお寺に『粗菓』と書いた金封に千円から3千円ほど入れてご挨拶した方が賢明です。もちろん、お茶菓子でも良いでしょう。その際、『いつもお墓をお守り下さりありがとうございます』と伝えます。ただし、一番の目的はお墓参りなので、難しい場合は無理にしなくても問題ありません」(西出さん)

2.墓前で合掌してから、墓所内を掃除する

「墓所内の枯れ葉など、目立つゴミを拾い、雑草を抜き取ります。ゴミを隣のお墓に寄せたり、隣の敷地を土足で踏んだりはしないように気をつけましょう。以前、あるテレビ番組でお墓参りのマナー指導をおこなった際に、ある著名人が、墓所内を掃除する際に履いていた靴を脱がれました。私もお墓の形体によっては、底が汚れていないきれいな掃除用の靴に履き替えます。これは、決してそうしなければいけないということではないので、ご安心くださいね。ただし、マナーは相手へのうやまいの気持ちからそれを行動や形で表現するものです。その本質を理解しお墓参りにも応用できたら素敵だと思います。ご先祖様も大切に思ってもらえていることに喜ばれ感謝されることでしょう」(西出さん)

3.柔らかい布で墓石の汚れを落とす

「たわしなど硬いものでこすると、墓石にキズがつき、石の艶が落ちてしまうので、柔らかい布やスポンジでお掃除しましょう。文字が彫られている部分は、雨水などが溜まって、苔がつきやすいので、丁寧に洗いましょう。力を入れすぎると折れたり欠けたりするので注意が必要です。どうしてもシミや苔などが気になるようなら、薄めた台所の漂白剤を使用します。夏は花筒にも入れると水が痛まず、長保ちします。掃除が終わったら、一度手を合わせ清掃させていただけた感謝と御礼を伝えると良いですね。その後、柄杓できれいなお水を全体にかけます。墓石に水をかけてはいけないという説もありますが、本来仏教では、お水はとても大切に考えられており、水を向ける、水向供養に繋がります。とはいえ、気になる方はなさらなくても結構です」(西出さん)。

4.持参した花や食べ物を供え、蝋燭、線香をあげる

「お供えものは、白い半紙やコピー用紙を持っていき、その上に置きましょう。半紙は、半分に折ったときに、上にくる面が左下がりになるように折ります。そして、輪になっている方を自分側に向けて、その上にお供え物を置いてください。濡れた墓石の上に紙を置くと、くっついて破れますので、紙の下にラップやホイルがあると良いですね。ご先祖様は香りをいただくといわれているので、飲み物は口を開けて半紙の上に供えましょう。なお、お線香の上げ方は、宗旨などによってしきたりも様々ですが、基本は3本か満数の10本が良いと言われています」(西出さん)。

5.お参りする

最後に合掌しお参りを。お参りを終えたら、お供え物は下げて持ち帰りましょう。また、生花もしばらくお参りに来られないようなら、一緒に下げて持ち帰るのが良いですね。

上記が一般的な内容ですが、これらはお墓のある霊園などによって異なるケースも。

「お墓参りには絶対的なルールや決まり事はありません。宗旨によりその型やルールは様々です。わからないことがあれば、聞くは、一時の恥、聞かぬは、一生の恥です。。お寺や霊園の関係者にお話を伺うのが一番安心で間違いがありません」(西出さん)。

こういった場でもコミュニケーションを大切にすると、さらに良い時間となりそうです。

お彼岸中にお墓参り以外にすることは?自宅での先祖供養の手順

お墓参り以外に、お彼岸に行うといいこととは? 自宅でできる先祖供養のしかたについても伺いました。

「ご自宅にお仏壇がある場合は、お彼岸に入る前に普段より念入りに掃除をして清め、仏花を生けるとご先祖様も喜ばれると思います。お供え物としては、春はぼたもち、秋はおはぎ、それに果物や故人の好物を用意します。ちなみに、ぼたもちとおはぎは同じものですが、春は牡丹(ボタン)の花、秋は萩(ハギ)の花をイメージして作られます。牡丹餅(ぼたもち)は、こしあんにそのお花のイメージから丸く大きめに作ります。お萩(はぎ)は、つぶあんで小ぶりに作ると言われています」(西出さん)。

そしてお彼岸の7日間は、朝食前と夕食前に灯明を灯し、お線香をあげてご先祖様の供養をします。

「お彼岸中の料理は、殺生をきらう仏教の思想をくんで精進料理にするのが基本とされていますが、故人が好きだったものなど、ご家族の考えで臨機応変に対応していいと思います」(西出さん)。

お墓参りといった行事はどこか堅苦しく決まりを意識しがちですが、こういった場でも大切なのは相手へ対する温かな真心だといえます。

「お墓参りには、絶対的な決まりはないので、ご先祖様への感謝の気持ちが一番大切です。お彼岸の時期が忙しく行くのが難しいこともあるでしょう。義務感や責任感から無理をしてお墓参りをしたとしても、ご先祖様も嬉しくありません。そういう場合は、時期は気にしなくて大丈夫。行ける時で構わないので、気持ちに余裕がある時にお参りしましょう。また、体調や遠方などの理由からお墓参りにいけない人や、お墓のない方もいらっしゃいます。そういう時も、心穏やかにご先祖様へ『いつもお守りくださりありがとうございます』と感謝の気持ちをそっと静かに日の沈む西に向かって思うだけでも伝わることでしょう」(西出さん)。

監修/
浄土宗西山深草派 大本山圓福寺
第85世住職 小島雅道さん
お釈迦様に心酔し、世に出回っている仏教、お墓に関する間違った情報を正すため、布教師としてわかりやすい教えとお人柄も人気。近年、ペット供養の依頼も多く命ある動物を慈しみペットロスになる人の心をも癒している。

取材・文/手塚よしこ
イラスト/篠塚朋子

西出ひろ子さん

お話をお聞きしたのは...

マナーコンサルタント。相手の立場に立つ『真心マナー®』をモットーに活動。NHK大河ドラマや映画、CMなどにおける俳優やアスリート、タレントへのマナー指導及び出演の他、皇室関連のマナー取材も多数。書籍監修および執筆も100冊以上と多く、著者累計は100万部を突破。西出さんが伝えるノウハウは日常の生活や仕事で気軽に取り入れられつつも手応えを感じられるもので、納得度の高い内容が人気。

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