6月に入り早速梅雨入りしそうな天気の今日この頃。四季のあるこの日本で、最も「キモノが嫌われる」季節への突入です(笑)。
第2回では、着物が洗い張りなどにより仕立て直しができることや、最後はハタキになるまで、昔の日本人は無駄なく「お蚕さん」の命の絹糸を使い切っていたとお伝えいたしました。実はキモノに欠かせない「帯」については、着物よりもさらに、絹以外の様々な原材料によりつくることが可能なのです。
植物の繊維、和紙素材など、バリエーション豊かな帯の素材
浴衣の際に締められる木綿や麻の帯(半巾帯のことも多いです)はもちろんのこと、自然布である藤の繊維を剥いで織られた藤布や、木の雁皮(がんぴ)など靭皮(じんぴ)繊維を原料とした和紙の素材など、長さがさほど必要なく直線仕立ての帯だからこそ、バリエーション豊かな素材からつくられるのです。
※靭皮繊維…植物の茎からとる繊維のこと
また、着物はもともと、平安時代の宮中では「小袖」とよばれる、いわば礼服の内側に着る下着のようなものから派生して、表着(一番外側に着るもの)になりました。しかし、欠かせない帯の幅については時代によって変化しています。
室町時代には、装飾的な要素よりも実用性が優先されたため、腰ヒモほどの太さだった帯の幅ですが、江戸初期に吉原の花魁が締めていた帯などは、現在の袋帯よりももっと豪華で太い幅でした。求められる帯の巾は、時代に合わせて流動的に変わっていきました。
昔来ていた洋服やおしゃれな柄の手ぬぐいなども帯に変身
現代の私たちの装いが、気候やライフスタイルに合わせて変わりゆくように、着物や帯が現在のスタイルに落ち着いたのも、ここ千年の間の日本の風土や暮らしに寄り添って移り変わってきたからです。
そう考えると、「これでなきゃいけない」なんてこと、本当はないんですよね……。
ここからは少し宣伝になってしまいますが……丁子屋では現代を生きる皆さまにもっと着物を身近に自由に楽しんでいただきたいと思い、今までにない新たな取り組みとして、「お気に入りの布から帯をつくる」ご提案を行っています。帯の仕立て職人が、伝統技術を活かし、丁寧に帯に合わせた帯芯を選んで仕上げますが、丁子屋お抱えの帯職人曰く、「かつては、蛇皮を帯にしたことも。不可能を可能にする帯づくりを行なっています」とのこと。
お気に入りで捨てられないお洋服・洋裁で余った布、さらには手ぬぐいなども、ぜひお持ち込みください。もし布が足りない場合は「足し布」をしてお仕立ていたします。手ぬぐいなら、帯の長さにより同じ柄のものを6~7枚分ご用意ください。
最近ではオシャレな男性から角帯(男性用の細い帯)の特注を頂くことも増えています。どんなご相談でも承りますので、お気軽にご来店ください!
さて、宣伝はこのくらいにして……。次回は「着物の格と季節」についてお話する予定です。着物はじめの皆さまにとっては耳の痛いお話となってしまうかもしれません……(笑)。
お読み頂きありがとうございました。
2023年6月7日 丁子屋 小林絵里