Tokyo

05/20 (月)

徳川将軍お抱えの“刷毛師”が創業。こだわりぬいた刷毛・ブラシを300年提供する『江戸屋』

日本の良いものを世界へ、世界の良いものを日本へ、agatajapan。


日本は、百年続く老舗が3万3,000軒以上存在する世界でも稀な国。そのご当主に、老舗を老舗たらしめる“五つの奥義”を伺う連載記事。


朝夕の歯磨きに、ブラシによる髪の手入れ、ニスにより汚れを防ぎ、光沢が出された机……。私たちの身の回りは、思えば数多くのブラシや刷毛の恩恵を受けています。


1718年(享和3年)。徳川8代将軍徳川吉宗による「享保の改革」で知られるこの年号がはじまったばかりの時期に創業された刷毛・ブラシの専門店は、今も東京・日本橋で営業されています。その名はずばり、『江戸屋』。


同社が老舗として人々に愛され続けるために大切にしているモットーや、『江戸屋』の屋号を得た経緯などについて、ご当主より直接「五つの奥義」という切り口で伺いました。

お客様に「できないとは言わない」老舗のプライド

お客様の要望を聞いて、ブラシを作ることが、一番のモットー。


「できないとは言わない」のが、老舗たる『江戸屋』のプライドです。東京、日本橋の旧日光街道、大伝馬本町通りでアール・デコの影響を感じさせ、ひときわ目立つ白い建物がその本店。玄関で迎えてくれたのは、同社社長を務める十二代目ご当主、濵田捷利さんです。

江戸時代の中期から刷毛を取り扱い続けてきたこの老舗。店内には所狭しと商品の刷毛・ブラシが展示されています。すべて合わせるとどれほどの数量・種類になるのでしょうか?

老舗 五つの奥義 その1:役割別に3,000種類もの刷毛・ブラシを生み出した

「筋違刷毛」「染色刷毛」「寸筒刷毛」「ドーサ刷毛」……、ニスやワックスを塗る用途だけでなく伝統工芸品に用いられる「江戸刷毛」など、その役割はさまざまです。漆器に用いられる「漆刷毛」、人形の頭に、貝殻から作られる日本古来の顔料、胡粉(ごふん)を塗る「人形刷毛」、版画の制作に欠かせない版木に絵の具を塗るための「木版刷毛」、おしろいを塗るための「白粉刷毛」など、店内のショーケースを眺めるだけでも、その種類の豊富さは一目瞭然。このすべてが、江戸時代から今まで使われており、連綿と受け継がれているのです。

また、私たちが毎日使う「歯ブラシ」「ヘアブラシ」「洋服ブラシ」も立派な刷毛・ブラシの一種。もちろん『江戸屋』でも取り扱われています。

老舗 五つの奥義 その2:品質にこだわり抜いた商品はリピーターも多い

『江戸屋』の商品は、使い勝手の良さや耐久力など、それぞれの用途に特化した品質が折り紙付きで保証されています。ふつうはナイロンなどの化学製品で作られている歯ブラシですが、『江戸屋』で扱われているのは馬毛や豚毛で作られたもの。使っているうちに圧力に負け、安いものではすぐに毛先が開いてしまう歯ブラシですが、馬毛や豚毛はその心配なく、2~3カ月は歯のケアに用いることができるのだそう。


「使い勝手がいいので、だいたい一度使うと皆さんリピーターになられますね」(濵田さん)

主に鬣(たてがみ)を用いる馬毛はやわらかで刺激が少なく、豚毛は馬毛よりもやや硬く強いコシが楽しめるとのことです。

老舗 五つの奥義 その3:将軍家お抱えの刷毛師として作り続けてきた

『江戸屋』の初代当主利兵衛は、当時日本を治めていた徳川七代将軍家継のもと、将軍家お抱えの「刷毛師」となった人物でした。刷毛づくりの腕前が認められ、御用商人の紹介を受けた利兵衛は、屏風やふすま、化粧に用いる刷毛などを徳川家に納品します。そして、授けられたのが現在の屋号『江戸屋』。

「そのおかげで(『江戸屋』を)長くつづけることができた」、と濵田さん。ブラシや刷毛は地味な商品だからこそ、誠実にいいものを作るという姿勢が代々大事にされているそうです。

老舗 五つの奥義 その4:職人技の手植えで作られるブラシ

濵田さんの目の前に置かれたのは靴用ブラシ。そのなかでもスエードの靴に用いるブラシには、なかに埃汚れが入ってしまいやすい特性上、難しい手入れをしやすくする匠の技が込められているといいます。

「燐青銅線(りんせいどうせん)」は、青銅に燐(りん)と錫(すず)を加えた銅線で弾力に富み、強度や耐食性に優れた線材料です。1本の直径は0.07mm。職人が手作業で、植え込んで製造を行います。機械植えに比べ少々値が張るものの、毛が抜けづらいというアドバンテージを持ち、長持ちが期待できるとのこと。毛の本数は、手作業ならではの指先の感覚で決められています。


「使っているお客さんの喜びの声が聴けるのがうれしい」と、職人の方も自ら喜びを語りました。

老舗 五つの奥義 その5:進歩のため、お客様からの要望は断らない

お客様の要望を断ってしまうと、技術の進歩も失われるというのが濵田さんの考えです。伝統を大事にしつつ、常に未来を見据え、時代の変化に食らいついていく。その積み重ねが、『江戸屋』を300年続く老舗へと育て上げたのです。

要望に応える心意気が、日々の生活を彩る

刷毛やブラシの細かい毛が、ニスやペンキをまんべんなく広げ、私たちの建物や家財を彩ったり、髪や歯の隙間を漉いたりしてくれることで、日々の便利さや美容・健康が成り立っています。要望に100%応える精神を持つ『江戸屋』の心意気を、ぜひその商品を通して体感してはいかがでしょうか。


スターマーク株式会社
日本のよいものを世界へ 世界のよいものを日本へ  伝統のよいものを現代へ 現代のよいものを伝統へ。


「五つの奥義:江戸屋編」の動画はコチラから

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