Tokyo

12/23 (月)

日本橋で300年以上、時代のニーズに沿った商品を開発し続ける。鰹節の老舗『にんべん』

日本の良いものを世界へ、世界の良いものを日本へ、agatajapan。


日本は、百年続く老舗が3万3,000軒以上存在する世界でも稀な国。そのご当主に、老舗を老舗たらしめる“五つの奥義”を伺う連載記事。今回お話を伺った老舗は、元禄12年(1699年)創業、東京日本橋の鰹節専門店『にんべん』です。


「出汁は全ての料理の土台となるようなもの。こんな商品ができたらいいなというものを想像するとワクワクします」


『にんべん』による革新的な商品開発で全国の家庭に広まった「あるもの」とは?

名付け親はお客様。「にんべんさん」の愛称で社名を変更

元禄12年(1699年)、初代・髙津伊兵衛が日本橋四日市の土手蔵(現日本橋一丁目野村證券の本社付近)で鰹節と塩干類の商いを始めました。その後、宝永元年(1704年)に小舟町に鰹節問屋を開業し、屋号を「伊勢屋伊兵衛」としました。


創業以来、「カネにんべん」と呼ばれるマークを使用しており、これを見た人から「にんべんさん」と呼ばれるようになりました。その愛称を社名に変更したという謂れがあります。


何度もカビをつけて熟成した「本枯鰹節」で引いた出汁が、『にんべん』の特徴的な商品です。出汁パックや出汁茶漬け、液体調味料、近年は惣菜やお弁当など、様々な商品を販売しています。

老舗 五つの奥義その1:タイミングを見極める目利きの技

本枯鰹節は、生のカツオを「煮る」「骨抜きする」「乾燥させる」「カビ付けする」という工程を経て作られます。

「鰹節に使うカツオは、鮮度が良ければいいというわけでもないんです。釣り上げられてからうま味成分が増える時間帯があるんですよ」と語るのは、『にんべん』十三代当主の髙津伊兵衛さんです。


そのタイミングでうまく煮ることで、うま味が多い状態の本枯鰹節になるのだそう。


鰹節の水分が中までしっかり抜けているかを選別する方法の一つが「カンカン」という音。乾燥して硬くなっている鰹節同士をぶつけると、独特な甲高い音がするのです。さらに優良鰹節カビの働きでうま味と香り高い本枯鰹節が出来上がります。

老舗 五つの奥義その2:極上の食感を生み出すのは厚み0.05mm以下

鰹節のこだわりは、“繊維を壊す削り方”にあるといいます。100分の5mm以下の厚みにすることによって、口の中でとろけるような食感を生み出しているのです。

「『にんべん』独自の削り方と削るスピードで、非常に口当たりが良い溶け具合を実現しています。その技術を認めていただいた結果、大変多くのお客様にお求めいただいているのかなと思っております」(髙津さん)

老舗 五つの奥義その3:時代を見抜き提案する

『にんべん』は、昭和44年(1969年)、削りたての鰹節がいつでも味わえるフレッシュパックを業界で初めて発売しました。


「鰹節が空気に触れて酸化すると風味が落ちてしまいます。その風味を保持する技術は非常に難しいものでした。そこで開発されたのが、袋に窒素ガスを入れることによって鮮度を保つ『フレッシュパック』です」(髙津さん)

当時は「手軽さ」を求められる時代になりつつありました。つまり、家庭で鰹節を削らなくなることを見抜いての開発でもあったのです。『にんべん』は常に顧客のニーズに寄り添って時代に合わせて商売を変化させています。


フレッシュパックの特許を取った『にんべん』ですが、鰹節業界の発展のためにと他社にも使用許可を出しました。その技術は瞬く間に広まって、私たちは手軽に家庭で鰹節を楽しめるようになりました。

老舗 五つの奥義その4:うま味と香りをより感じてもらうために

素材や製法、ひき方にこだわり抜いた『にんべん』の鰹節出汁。鰹節だけで出汁をひく場合は、「水1リットルに対して30gの鰹節を入れる」のが推奨される方法です。ただ、家庭内で鰹節を使う機会はまだまだ限られています。

「やはり鰹節の出汁は、非常に強い香りがあります。我々が存在し続けるには、料理全般にもっと出汁を使う機会を増やすことが大切だと考えています」(髙津さん)


そこで『にんべん』では、昭和39年(1964年)に、業界で初めて「つゆの素」を商品化しました。一本一本吟味した鰹節から丁寧にひいただしを贅沢に使用した「つゆの素」は、めんつゆとしてはもちろん、煮物なども料理全般に使えるということで、大好評を得るのです。

老舗 五つの奥義その5:鰹節を未来に伝えていくために

「老舗」という表現を積極的に発信していないという髙津さん。けれど、長い歴史を持つ店として、「本物の鰹節を伝えていくこと」を使命として持ち続けています。そこで、まずは知ってもらう機会を増やすために、様々な取り組みを行っています。


例えば、日本橋にある『にんべん 日本橋本店』。店の中で鰹節を削り、削りたてを販売しています。また、実際に鰹節を削る体験もでき、鰹節本来の味や香りを堪能できることが本店の強みになっています。

さらに、出汁の専門店として「日本橋だし場/NIHONBASHI DASHI BAR」を開店しました。こちらでは、ひきたての鰹節の出汁が1杯100円で味わえます。トマト仕立てやクリーム仕立てなど、種類も豊富。気軽に出汁を楽しめるバー感覚のお店です。


「こんな商品があったらいいなっていうものを想像して、実現することに向かっていくこと。この先もずっと、そんなワクワクする気持ちを大切に持ち続けていきたいですね」(髙津さん)

日本中の家庭の台所で当たり前のように使われている『にんべん』の商品。時代のニーズに沿って魅力ある商品を開発し続けているからこそ、広く愛され続けているのです。


スターマーク株式会社


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「五つの奥義:にんべん編」の動画はコチラから

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