着物に合わせる羽織の仕立て
再び丁子屋を訪れた成田さん。
前回の訪問でオーダーした着物の生地が仕上がってきました。
地紋の亀甲模様が綺麗に浮かび上がっています。
地紋とは、 糸や織り方を変えて布地全体に織り出した模様のこと。
同じ色で染めても、この地紋によって生地はさまざまな表情になります。
今回は、着物に合わせる羽織の仕立てについて確認していきます。
着物の生地が反物として仕上がってからの方が、羽織とのコーディネートがイメージしやすいとのこと。
成田さんの羽織は、着物の生地と相性の良いシックな灰色に決まりました。
裏地にこだわる江戸の粋
羽織の裏地、「羽裏」にこだわる着物のおしゃれと遊び心を提案したい、と女将の小林さん。
おすすめは、豊臣秀吉が愛用したと伝わる「富士御神火文黒黄羅紗陣羽織(ふじごしんかもんくろきらしゃじんばおり)」富士山のモチーフです。
草履取りから天下人への大出世を果たした秀吉にあやかろうと、仕事運の験担ぎとしても人気とのこと。
陣羽織は、戦国の武将たちが甲冑の上から着て、雨から甲冑を守ったり防寒の役割があったほか、自らの財力や威厳を示す装飾品としても発達してきました。
この陣羽織にならい、羽織の裏地で粋を競ったという江戸の町火消したちは、消化活動を無事終えると、羽織を裏返して着用し、その成果を誇らしげに町中を凱旋したというエピソードも。
小林さんから「裏地の美学」について聞くと、せっかくなら、自分だけのこだわりを詰め込んだ着物にしたい、と成田さん。
地元の富士山にもゆかりのある、このデザインがとても気に入った様子です。
「額裏」という「羽裏」を額縁の絵画のように一枚続きで仕立てる贅沢な誂えにすることになりました。
続いて、着物と羽織の反物をまとって、来た時の雰囲気を確認します。
とても上品な色の組み合わせになりました。
次に、見本の着物を着て、仕立てに必要な寸法を測っていきます。
色々な体型に合わせることができる着物ですが、粋に格好よく着こなすには最適なバランスがあるのだとか。
緻密に採寸を行い、自分にぴったりの仕立てができるのがおあつらえの良いところ。
女将の小林さんと店長の岩脇さんが、息のあったコンビネーションで手早く採寸を進めていきました。
仕立ての寸法や方法が決まり、あとは仕上がりを待つばかり。
次回、完成の様子をお届けします。
お楽しみに。