Tokyo

12/26 (木)

伝統と革新を老舗に学ぶ「老舗サミット in 日本橋」|老舗フェスティバル2023 by agataJapan

10月20日は「老舗の日」。
商売の神様として知られる恵比寿様の祭り、恵比寿講の日にちなんで登録された「老舗の日」は、創業100年を超える企業が世界一多いと言われる日本が、世界に誇るべき老舗の良さを見直す日です。
老舗の日である2023年10月20日とその翌日の21日に、老舗の技術、伝統や文化に触れることができるイベント『老舗フェスティバル2023 by agataJapan』が開催されました。

イベント初日の10月20日に開催された関係者向けカンファレンス「老舗サミット」には、全国から老舗の旦那や女将、自治体関係者が集結。各地での「伝統と革新」についての取り組みについてのお話を聞くことができました。

日本で一番100年企業の数が多い自治体とされている東京都中央区の山本区長のご挨拶からスタート。
日本橋は江戸時代から商業の中心として繁栄し、五街道の起点ともなった場所であり、また全国の老舗企業の約1割が集まる東京都において、その約2割が中央区にあること、その結果、日本橋は伝統文化が今に残る街として、老舗サミットの会場に選ばれたとのお話をされました。
続いて、有田焼で数多くの老舗を擁する佐賀県の有田町の松尾町長、西武100年企業の会を立ち上げて域内の老舗の支援を始めた西武信用金庫の髙橋理事長のご挨拶を皮切りに、代々家業をつないできた老舗のご当主の皆様による伝統と革新をテーマとしたお話を伺いました。

日本橋の老舗の取り組み

開催地である日本橋の老舗の皆さまのお取り組みを通じて、長寿企業になるヒントを見つけようというプログラムから始まりました。
浴衣・江戸小紋の老舗である竺仙(ちくせん)の小川茂之常務が現在取り組んでいるのは「CHIKUSEN dress」。反物の端材を活用して現代の日常に寄り添う取り組みについて、ご紹介されました。
続いて、人形町今半 髙岡慎一郎会長より、元々「牛鍋」として提供されていた料理を高級路線の「すき焼き」として提供することなど、時代のニーズを捉え、進化を続けることが企業継続の秘訣であるとのお話をいただきました。
つゆの素や鰹節のフレッシュパックで知られるにんべんの髙津伊兵衛社長は、1720年に当時としては画期的な商品券の導入による商売の拡大や、近代に入ってからの鰹節を中心にした調味料の開発、さらには鰹節の鮮度を保つためのフレッシュパック技術の確立、21世紀に入ってからのグローバルな展開など、300年以上の歴史を大切にしつつ、未来に挑戦し続ける姿勢についてお話しされました。
また、老舗フェティバルの後援者である東京商工会議所の中央支部の活動「老舗企業塾」について、高津社長より説明がありました。

東京の新名物を目指す 東京ジン発売の発表も

1つ目のプログラムの最後は、スターマークの林正勝社長から、日本橋の老舗 竺仙・日本橋さる屋・にんべん とコラボレーションした江戸前クラフトジン「東京ジン」について発表がありました。

「県ジンプロジェクト」がリリースした東京ジンの購入はこちらから

https://shinisetsuhan.net/collections/kenginproject

生活様式の変化に伴う和装業界の可能性

2つ目のプログラムは、老舗フェスティバルの協賛者である西武信用金庫の提供による、「生活様式の変化に伴う和装業界の可能性」。

浮世絵の版元であり、団扇・扇子の老舗である日本橋の伊場仙 吉田誠男社長より、和装業界は少し減少傾向かもしれないが、外国人観光客の受け入れ強化や猛暑の影響で売上の減少を防げたこと、また2023年6月にメタバースで美術館をオープンしたこと、今後はメタバース上で世界中の人々に和物を販売することを目指しているという取り組みをご紹介いただきました。

組紐の老舗 日本橋の龍工房の福田龍太部長からは、伝統工芸の技術を現代に活かすために、企業とのコラボレーションや内装ディスプレイの制作、またレティーガガのシューズディスプレイや、東京都の江戸東京きらりプロジェクト等に参加するなど、時代に合った魅力的な作品を創り続けることで、伝統工芸の新しい可能性を模索する試みについてお話しいただきました。

続いて、虎ノ門の東京農業大学、愛媛県産業技術センター、愛媛県酒造共同組合との連携のもと丁子屋 小林絵里社長とスターマーク林社長からは、共同で取り組んでいる、「キモノをキラクに」楽しんでいただくための新しいサービス「着物クロッシング」についてご説明がありました。

2つ目のプログラムの最後は、竺仙の小川文男社長より、着物のファッションは進化し続けており、時代に沿った商品開発が重要であること、変わりゆくニーズを先取りして製品に反映させること、伝統を守りつつも新しい価値を加えることの重要性をお話しいただきました。

コーヒーブレイクー明治創業の松屋コーヒー本店のドリップコーヒー

次のプログラムに入る前に、休憩タイム。

明治創業の名古屋の老舗 松屋コーヒー本店の、松下和義様会長と松下幸司社長がドリップコーヒーを振る舞ってくださいました。

松下会長より、1950年台に開発した松屋式ドリップ法を基に、コーヒーの淹れ方や知識を広める活動を行っているとのお話がありました。

室内に漂うコーヒーの香り。会場のそこここで、コーヒーを片手に談笑されている姿が見られました。

 

門前町琴平町の老舗

3つ目のプログラムは、「門前町琴平町の老舗」。

「こんぴらさん」で知られる金刀比羅宮の門前町である香川県琴平町から、五人百姓池商店 池 龍太郎社長 ・染匠吉野屋 大野 篤彦社長 ・金毘羅醬油 京兼 秀樹社長が登壇されました。

池社長より、琴平町は人口減少が問題になっているが、金刀比羅宮のある歴史と文化が豊かな町であり、またうどんの発祥地としても知られていること、町の人々が、金刀比羅宮が「一生に一度」の場所ではなく、「何度でも参りたくなる街」を目指しているという取り組みについてのお話を伺いました。

 

モノ消費からコト消費へ

5つ目のプログラムは「モノ消費からコト消費へ」。

京都府から参加の飯尾醸造 飯尾彰浩社長から、お米の栽培から日本酒作りを行い、そのお酒を全てお酢にしているという世界でもユニークな製法や、お客様への体験会、世界のトップ職人を集めて最高のシャリと寿司作りの技術を学ぶ世界シャリサミットを主催しているというお取組などを伺いました。

東京大森海岸の松乃鮨 4代目手塚良則さんから、ベジタリアン、ハラール、グルテンフリーなど、様々なニーズに対応し、また外国人向けの寿司握りの体験サービスや、出張寿司サービスなどの取り組みについてお話しいただきました。お寿司作りのデモンストレーションも披露され、参加者の関心を惹いていました。

最後に東京 麻布の総本家更科堀井の堀井良教社長から、さまざまな食関連の団体との連携を通じて、生産者と協力し、環境に優しく美味しいそばを開発・提供していること、またヴィーガン料理やそば料理屋など、多くの企業との繋がりの中で、物語のある商売を作ってい推進していきたいとのお話をいただきました。
プログラムの最後には、飯尾様によるシャリ切りパフォーマンスがありました。

日本酒の未来

最後のプログラムは、「日本酒の未来」。酒蔵の皆様のお話を伺いました。

埼玉県の滝澤酒造 滝澤英之社長からは、スパークリング日本酒、特に自然発酵で透明なものを「AWASAKE」と呼んで力を入れていること、シャンパン製法を応用したAWASAKEの普及に努めるとともに、ピンク色のスパークリング日本酒を開発し、特許も取得。輸出も伸びると考えており、スパークリング日本酒の世界を切り開いていくというお話を伺いました。

岐阜県下呂市の天領酒造 上野田又輔社長より、スパークリング日本酒に取り組んでいるとともに、年間110万人の観光客を迎える下呂温泉にて、新しいどぶろく体験を提供しているとのお話をいただきました。

群馬県の高井 伯耆原(ほうきばら)幹夫社長からは、創業から294年が経ち、300年目に向けて、微炭酸の酒造りへのチャレンジや、これまで取り組んでいなかった宣伝活動などを行なっていくとのお話がありました。

愛媛県今治市から参加の八木酒造部 八木伸樹社長からは、東京農業大学、愛媛県産業技術センター、愛媛県酒造共同組合との連携のもと、花酵母を使用した日本酒を開発したこと、また600年前に確立された「水もと」製法を利用し、人工添加物を一切使用せず、空気中の乳酸菌を活用した日本酒「MINAMOTO」を発売したとのお話を伺いました。

福島県郡山の仁井田本家 内藤高行さんより、全て無農薬のお米を使ったオーガニックのお酒作りを行なっており、自社田んぼでの自然栽培を行い、蔵見学や田植えや稲刈りなどのイベントを開始し、実際に来てもらうような取り組みを始めたこと、アルコールに興味のない人々や子供たちにも向けて、お米から作るノンアルコールの発酵食品を行なっていることをお話しただきました。

最後に、東京の豊島屋本店 吉村俊之社長から、1596年に酒屋兼居酒屋を始めたのが始まりで、居酒屋のルーツとも言われていること、関東大震災の際に倒壊して以来、外食事業は行なっていなかったが、2020年に「豊島屋酒店」という飲み屋を始め、「江戸東京モダン」をコンセプトに、伝統的なおつまみを特に若い方に楽しんでいただけるよう、現代的なアレンジを加えて提供しているというお取り組みについてお話しいただきました。

 

懇親会/テマパ(手巻き寿司)

すべてのプログラム終了後は懇親会。

乾杯の後は、飯尾醸造の飯尾社長が用意した手巻き寿司のシャリと海苔に、自分で色々な老舗の具材を自由に組み合わせて手巻き寿司を作って頂きました。

使用されている飯尾醸造のお酢は、16年かけて作られたもの。酸味がきつくなく、本当に美味しいとあちこちで舌鼓を打つ声が聞こえていました。

しばらく自由に歓談した後、閉会となりました。

参加されていた老舗のご当主の皆さまからは、各社の様々な生き残りのための努力は非常にためになり、ぜひ一般の方にもお話を聞いていただきたい、とのご意見が出ていました。

ただ伝統を守るだけではなく、時代に即した商品作りやサービス提供をいかに行なっていくかを常に考え、未来を切り拓くための勇気と努力を継続してきたことからこそ100年以上続いてきたのが、日本の「老舗」。

「古くさい」のではなく、長く続いた技や経験から「いま」を生きる強い思念を感じ、深い学びを得ることができました。

 

お話を聞きたい方は、ぜひ動画でご覧ください。

https://www.youtube.com/live/VZhFn02Tm5E?si=-X0x7MkFtCdhfJHI

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