Tokyo

04/27 (土)

【第20回】家庭でも美味しく生麺の蕎麦を茹でる方法

「天ぷら」「そば」「寿司」「うなぎ」は、江戸を代表する「食」と言われ、それぞれが江戸の庶民文化の中で培われてきました。このコラムでは、そば店の店主として、そばにまつわる面白い話や、一般的には知られていないそばにまつわる意外な事実などをお伝えします。そば文化をより知っていただくきっかけになれば幸いです。

※当コラムは「芝大門  更科布屋」の店内で、月に1話、お客様に配っているリーフレットから転載しております。

さまざまな製麺状態のメリット

ちょっとしたコツをつかめば、ご家庭でも美味しく生麺の蕎麦を茹でることができます。


ちなみに当店では蕎麦のお土産として、以下の3種類の麺をご用意しております。


・茹で上がったお蕎麦の折詰め
・茹でていない生麺の折詰め
・乾麺


手間無く持ち帰ってすぐに食べられる「茹で麺」、保存が出来る「乾麺」、ご家庭に持ち帰りお食べ頂く際に店内のお蕎麦に最も近い「生麺」とそれぞれの便利さが違います。
年越し蕎麦のお土産も従来は茹で麺が殆どでしたが、最近はご家庭で一手間加えていただく生麺をお薦めしております。


「生麺」の良い所は俗に言う「三たて(挽きたて、打ちたて、茹でたて)」の内の「茹でたて」の美味しさを実現できる所ではないかと思います。
とは言っても丁寧でしっかりとした製麺技術の裏づけが無いと、茹でる技術も道具も違うご家庭でのいつも通りの食感はお約束できないと思います。


しっかりとした製麺を前提に、ここでは茹で方の技術の一端をお伝えできればと考えております。

蕎麦専門店店主直伝の生麺の美味しい茹で方

材料:生麺お土産(四人前480g 程度を目安)
道具:できるだけ大きな鍋・揚げ笊(深めのざる)・ため笊(浅めのざる)・ステンレスボール×2・せいろ(水きれの良い皿)・菜箸・氷


1. ステンレスボール×2に水を張り、そのうちの一つのボールにはたっぷり氷を入れておく。
2. 鍋にお湯を張り火に掛け.完全に沸騰させる。
3. 1人前約120gのそばを手に取りぱらぱらとほぐしながら滑らせるようにそっとお湯に入れる。
4. そっと浮き上がらせるように菜箸使い混ぜる。蕎麦を切らないように細心の注意がコツ。
5. 火の勢いは変えず、吹きこぼれそうになったら差し水をし、そばが湯の中で対流するように注意しながら茹でる。茹で時間は90秒から120秒が目安です。 菜箸に数本引っ掛け親指の腹で軽く押してぷつっと切れれば茹で上がりです。蕎麦は冷水で洗うので芯を残すアルデンテの必要はありません。しっかり茹でるのが美味しいお蕎麦です。
6. 茹であがったら揚げ笊にあけ、用意したボールの水を一気にかける。水は冷たいほど良い。
7. そばの入ったざるをボールに入れ、流水でよく洗う。
水道の蛇口にはシャワーをつけておいた方が、水がそば全体にかかります。
ぬめりが良く取れるまで水の中を泳がせるように丁寧に洗います。小川が流れるような音がします。
8. 洗い終わったら、用意しておいた氷水にそばをあけ、10秒程度さらしよく冷やす。
9. ため笊に小さくとり、余分な水気を切る。
10. せいろ等、水きれの良い器に盛りつける。


少量ずつ、沸騰を保って茹でた後、しっかりと冷水で洗う事が蕎麦店の食感に近づけるコツです。

金子栄一さん

芝大門 更科布屋 布屋萬吉こと7代目ご当主

この記事を書いたのは...

寛政3年(1791年)、薬研堀(現在の東日本橋)で創業。大正2年(1913年)から増上寺門前にお店を構えるそば店「更科布屋」の7代目ご当主。芝の地で創業100年以上の伝統を有する老舗の会「芝百年会」の会長も務める。

更科布屋ホームページ

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