Tokyo

10/12 (土)

ショートケーキやパンケーキ、アフタヌーン・ティーなど。スイーツの美しい食べ方

自分へのご褒美や、高級サロンのような贅沢な空間でスイーツを食べるときなどに身につけておきたい洋菓子の食べ方マナー。スイーツの味を最後まで楽しみながら美しくいただくことで、優雅なティータイムを過ごしたいものです。そこで今回は、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、洋菓子のきれいな食べ方を教えていただきました。

三角ショートケーキは尖った方から、四角い場合は手前左側から食べる

洋菓子の定番、ショートケーキの食べ方は、簡単のように見えてコツがあります。まず、周りのセロファンをフォークで巻き取り、お皿の左斜め上に置きましょう。三角形のケーキの場合はとがった方から、丸型や四角形の場合は手前左側から、ひと口大に切って食べます。ケーキが倒れそうなときは、フォークとナイフで、ケーキを倒しても大丈夫です。上に乗っているイチゴなどは、そのまま食べようとするとケーキが崩れてしまうので、まずフォークで軽くイチゴを刺してお皿に移し、お皿の上でしっかりと刺して、必要ならひと口大に切ってから口に運びましょう。

「食べ終えたら見苦しくないように、汚れたフォークをケーキが乗っていたアルミホイルで包みお皿に置くといいといわれています。しかし一方で、お店の人にとっては片付けの手間がかかるので、やってほしくない行為だともいわれています。そのため、アルミホイルを4分の1くらいに畳んで、フォークの上に乗せれば見苦しくありません。2022年に亡くなられたエリザベス女王が使ったカトラリーは、先端しか汚れていなかったといわれています。つまり、洗う人のことまで考えて、カトラリーを汚さないように食べる配慮が美しい食べ方であり、マナーなのだということです」。

気をつけたいこととして、周りの人から“自分が”美しく見えるように食べたいというのは自己満足にすぎないといいます。

「自分を上品に見せたい、そう見える食べ方をしたいというのは自己満足です。マナーはお互い様のことなので、同席者が恥ずかしい思いをしないように、お店の人が気持ちよく片付けやすいようになど、まずは一緒にいる相手やお店の人のことを考える“相手ファースト”の精神で食べるのが大切なマナーだと思います。その結果、品の良い人ね、と評価されることにつながる可能性があるというわけです」。

「どうしても、ナイフの汚れが気になるようなら、カトラリーを傷つけないように、フォークのサイド部分で汚れを削ぎ落とすことも一法です。このとき、ナイフにフォークのサイドを優しく浮かすように当てて、ゆっくりと音を立てないようスライドさせます。しかし、これはなるべくおこなわない方が良いので、やはり、カトラリーは先端を使用することを意識して使ってみましょう」。

タルトはフォークを垂直に刺して切り分け、フルーツと一緒にいただく

「一番下のタルト生地が硬いタルトは、フルーツとタルトを別々に食べてしまいがちです。ナイフがあれば、底部分が硬い場合は、ナイフで切ります。フォークだけの場合は、垂直に刺して、点線のような型をつけ、それにフォークのサイド部分をそわしナイフ代わりとし切り分けます。その際、大きな音を立てないように注意しましょう。パティシエの方もそれぞれですが、多くはフルーツとタルトは分けずに一緒に味わってほしいという思いがあります」。

崩れやすいミルフィーユ、一度に底までフォークを入れないのがコツ

食べ方としては、ミルフィーユを倒してから切るか、倒さないままで切って食べるかの2通りがあります。

「まず、倒してから切る場合についてです。ミルフィーユは崩れやすいので、最初にナイフとフォークで挟み、お皿の奥に向かって倒します。そして、左端から切り、さらに食べやすい大きさに左下から切ります。また倒さずに切る場合ですが、ミルフィーユには高さがありますから、一気に底までフォークを入れるとバランスを崩して綺麗に切ることは難しくなります。そこで、半分くらいまでフォークを入れて、ひと口大をすくいとりましょう。パイ生地とクリームは一緒に食べます。パイ生地のかけらや残ったクリームは、フォークとナイフを使って、お皿の手前に寄せて食べましょう」。

ミルクレープは層の半分くらいまでフォークを刺し、ひと口分ずつすくう

「ミルクレープもフォークを入れた途端に形が崩れやすいスイーツです。立てたまま一番下の層まで一気にフォークを刺すと、クリームがはみ出し層が崩れる可能性があります。そこで、層の半分くらいの高さまでフォークを刺し、ひと口分ずつ食べると良いでしょう。一方、立てたままナイフを入れ崩れることを避けたい場合には、ナイフとフォークで挟み奥側に倒します。そして、左手前からひと口大に切ると綺麗に食べることができます」。

シュークリームは、シュー皮やクリームをひと口大にして食べ進める

「まず、フォークとナイフといったカトラリーが用意されているケースからお伝えします。シュー皮が上下でスライスされている場合は、上側の生地を手に取り、ひと口大にちぎります。そのちぎった生地に用意されてあるカトラリーですくったクリームを乗せ、手で口に運びましょう。下半分のシュークリームは、左手前からひと口大に切って食べていきます。一方、シュー皮が切られていないシュークリームの場合は、上3分の1あたりにナイフを横から入れて蓋となる上部を切り外します。あとは、前述同様です。
また、カトラリーがない場合は、手で上部を一口大にちぎり、クリームをつけて食べます。その後、下半分だけになったら、手に持って口に運ぶとクリームがこぼれないので良いでしょう」。

個包装のシュークリームの場合は、カトラリーを使わない食べ方でいただきましょう。

パンケーキは食べる分ずつひと口大に切り分け、トッピングと一緒に食べる

「左側手前からひと口大に切り分けて食べるのが基本ですが、パンケーキに正しい食べ方はありません。好きに食べて大丈夫です。とはいえ、お店の方の多くは、パンケーキとクリームやトッピングは一緒に食べて欲しいとおっしゃいます。また、ひと口にパンケーキと言っても2段重ねもあれば、一枚の厚さによってもその食べ方は異なってくるでしょう。例えば、一枚がさほど厚くなければ、2枚一緒に切り食べることができます。一方厚みがある場合は、一枚ずつひと口大に切る方が食べやすいですね。
ただし、最初にトッピングだけ食べ切ったり、最初に全部切り分けたりはしないように。その都度、食べる分ずつ切り分け、トッピングはパンケーキと一緒に食べて、食材に感謝し、味わい楽しみましょう」。

アフタヌーン・ティーの席で知っておきたいマナー

最後に、女子会やちょっとしたご褒美イベントとして利用することが多いアフタヌーン・ティーのマナーをご紹介します。もともとはイギリスの貴族発祥の喫茶習慣で、午後に紅茶とともに軽食や菓子を喫食する茶会のことです。その伝統にならって、スイーツだけでなく紅茶の飲み方も意識してみてはいかがでしょう。

「紅茶は、お店の方が注いでくれたら『ありがとうございます』と伝え、自分のタイミングで注ぎたい場合は、『自分で注ぎますので結構です。ありがとうございます』と伝えましょう。おかわりは通常、自分で注ぎます。紅茶を飲む際は、ソーサーを持ち上げないこと。カップのみを持ち上げて飲みましょう。ただし、テーブルと距離がある場合は、ソーサーも一緒に持ち上げます。ティースプーンを使うときはカップの中でくるくると回すのではなく、縦に上下に動かし、使い終わったらカップの奥に置きます。最初の紅茶を飲み始めるタイミングは、全員に紅茶が行き渡ったときです。目上の方が同席している場合は、その人が飲んだら飲み始めましょう」。

では、お楽しみのフードについて。正式なアフタヌーン・ティーは、自宅にお招きして、サンドウィッチからお出しします。よく見る3段重ねのスタンド“スリーティアーズ”は、ホテルなどで提供するための簡易的なものです。ここでは、“スリーティアーズ”で供された場合の食べ方をお伝えします。

「スリーティアーズの一番下にはサンドウィッチ、真ん中にはスコーン、一番上にはスイーツが盛られています。食べる順番は下から上の順番で。一つのお皿に複数の種類が乗っている場合は好きなものから食べて構いませんが、色や味が薄いものから食べると食べ方の楽しみ方を知っている人と思われるでしょう。サンドウィッチは、ひと口サイズであれば直接手でいただきます。このとき気をつけるのは、食べかけはお皿に戻さず、食べきること。大きめのお皿とナイフ・フォークが添えられている場合は、自分のお皿にサンドウィッチを置き、手で食べて構いません。もしも大きすぎる場合は、ナイフでひと口サイズに切っても良いですし、手で食べやすい大きさにちぎり、そのまま口に運んでも構いません。どのように食べるかは、自分で選択します。どうすればいいのか迷ったら、周囲の人と同様にすると安心です」。

次にポロポロしがちなスコーンはどうやって食べるのがいいのでしょう。

「スコーンを食べるときは、自分のお皿に取ってから、両手で水平上下にスコーンを割ります。冷めると割りにくくなるので、温かいうちに割りましょう。手で割ると崩れそうな場合は、ナイフとフォークがあれば、それらを使っても良いです。その後は、スプーンでクロテッドクリーム(バターと生クリームの中間のようなクリーム)とジャムを自分のお皿に移し取り、それぞれひと口分ずつ塗って食べます。そして、最後にスイーツを食べましょう」。

「アフタヌーン・ティーの主役は紅茶です。さまざまな種類の紅茶を味わいたいものです。サンドウィッチを食べるとき、スコーンを食べるとき、そしてスイーツを食べるときなど、それぞれのメニューに合わせてお好みの紅茶を選び楽しんでみましょう」。

SNS人気も手伝って、美しく飾られた華やかなスイーツがたくさん並ぶようになってきた昨今。パティシエの思いを汲みとって、見た目の美しさを保ちながら、おいしく味わってみませんか?

取材・文/手塚よしこ
イラスト/篠塚朋子

西出ひろ子さん

お話をお聞きしたのは...

マナーコンサルタント。相手の立場に立つ『真心マナー®』をモットーに活動。NHK大河ドラマや映画、CMなどにおける俳優やアスリート、タレントへのマナー指導及び出演の他、皇室関連のマナー取材も多数。書籍監修および執筆も100冊以上と多く、著者累計は100万部を突破。西出さんが伝えるノウハウは日常の生活や仕事で気軽に取り入れられつつも手応えを感じられるもので、納得度の高い内容が人気。
西出ひろ子さんの情報は公式サイト及び、Instagramにて随時更新中。

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