居酒屋のルーツ、江戸の酒文化を味わう「東京モダン酒場」
江戸のまちづくりの賑わいの中で誕生したのが豊島屋。上方から運ばれたお酒を求めやすい値段で出す店として人気を集めました。酒の肴に大きな豆腐田楽をこれまた手頃な値段で売り、居酒屋の原型となったと言われています。
また、雛祭りに飲まれる白酒も豊島屋の名物でした。白酒は、蒸したもち米と米麹をみりんと合わせて甘く発酵させ、石臼で挽いたもの。米と米麹を発酵させてつくる、ほとんどアルコール分がない甘酒と違い、7度程度のアルコール分があります。雛祭りの時だけ女性がおおっぴらに飲酒できた江戸の町で人気を集めた白酒を、豊島屋では今も大切につくり続けています。
明治時代から始まった清酒の醸造も、時代とともに銘柄が増え、創業者の名前を冠した純米酒「十右衛門」。水、米、酵母、原材料のすべてを東京産でまかなった吟醸酒「江戸酒王子」など、豊島屋の顔は今や多種多彩です。
令和2年(2020年)、創業地にほど近い神田錦町の複合型ビルの一角に、酒を商い、肴を供する立ち飲み居酒屋としてオープンしたのがこちらの豊島屋酒店です。関東大震災で店が倒壊してから約1世紀ぶりの居酒屋再開。近隣で働く人から住まう人まで女性も男性も立ち寄りやすいモダンな店内では、さまざまな銘柄を味わえるほか、定額で毎日でもお酒を楽しめる日本酒サブスクメニューなど現代的なサービスも人気です。酒が進む肴も豊富で、定番メニューにはもちろん江戸以来の名物・豆腐田楽も。江戸時代と変わらぬ焦がし味噌の香ばしい香りとともに東京地酒を味わう、このスタイルこそ、まさに江戸と東京をつなぐ美味なる遺産。江戸の誕生から現在まで人々の舌を喜ばせているのです。