旧街道沿いに立つ刷毛・ブラシの総合専門店
日本橋の旧日光街道沿いに建つ、アールデコの影響を感じる商店建築。国登録有形文化財となっている大正時代の建造物です。特徴的な白っぽい人造石洗い出し仕上げの外壁に掲げられた「江戸屋」の看板文字は、よく見ると漢字のはらいがすべて刷毛の先を模した形になっています。そう、ここは江戸時代から続くブラシと刷毛の専門店。古くは江戸城のふすまや障子を仕上げた刷毛づくりの技を、幅広い種類の刷毛やブラシづくりへと広げ、今に伝えています。
カラカラと気持ちの良い音を立てる引き戸を開けると、隅々まで掃き清められた店内に大から小までブラシ・刷毛類が並びます。歯ブラシ、靴ブラシ、洋服ブラシに、ヘアブラシ、メイキャップブラシ、さまざまな台所用品にはたき、ほうきといった掃除道具。普段意識していないだけで、実は私たちの生活はブラシや刷毛に大変お世話になっていることに気づかされます。
江戸屋の商品は天然素材にこだわりがあります。やさしく手になじむ天然木のハンドルに、目的にかなう獣毛を選び、ぴったりの長さや密度で植えつけていく職人の技。膨大な種類のブラシごとに専門の職人が仕上げていくのです。
使い心地のよさ、目的にかなった結果を出せる道具であることが支持する人を増やし、長年にわたり、使い手の声・要望に応える形でそれぞれのブラシが進化をしてきた結果なのでしょう。シューケア、ヘアメイク、クリーニング等、プロからのご指名買い、リピート買いが多いというのも納得です。相談をうけて、新しい素材や用途にあった商品を開発することもあるのだそう。
お子さんのヘアブラシを買いに来た子連れの女性、靴ブラシを探しに来た男性、自転車に乗って歯ブラシの替えを求めに来た近所の男性。訪れるお客さんの顔ぶれもさまざまです。
江戸屋で手に入るのは、きっとただの道具ではありません。手入れをしながら大切にものを扱う責任感や、身の回りを整える楽しさといった豊かな価値観なのです。