なめらかな羽二重団子の食感は、文豪もトリコに
看板商品の「羽二重団子」は、正岡子規が句や紀行文に残し、夏目漱石が『吾輩は猫である』に記すなど、文豪もトリコにした味わい。明治半ばに出版された江戸から明治にかけての名店番付「維新の頃より明治のはじめ 大江戸趣味風流名物くらべ」にも、その名が記されています。
なめらかで歯切れの良い団子の生地をつくるには、米粉と水を合わせた後、臼と杵で何度もついてコシを出すのがポイント。
「家訓にも『団子生地をつくなら人の倍の回数を』とあるほどです。人一倍努力せよという意味で、これだけは譲れません」とご当主の澤野さん。手間暇をかけた味わいに加え、平たい形に作り、串に刺してあって食べやすく、お手頃価格なのも多くの人に愛される理由。「餡団子」と「焼き団子」は甘辛で、こし餡のやさしい甘み、生醤油の香ばしさとほどよい塩けが引き立てあって、ずっと食べていられそうです。交互にいただく人も多いとか。
美術思想家である岡倉天心も、この団子をつまみに酒を飲み、家に帰るのを忘れたというエピソードがご子息の随筆で語られているほどのファンだったようです。かつて日暮里は、富士山に沈む夕日が見えた場所でもあり、澤野さんは「文豪たちも夕暮れを眺めながら、団子で晩酌をしていたのでは」と話します。
店内で食べるなら、「餡団子」、「焼き団子」1本ずつと煎茶のセットが定番ですが、ミニサイズの「餡団子」と「焼き団子」、抹茶がセットになった「抹茶セット」も食べやすくておすすめ。お土産にするなら、「餡団子」を小ぶりな雫形にした「しづくあん」(12個入り961円)や、一口サイズであんこをはさんだ「プティもなか」(1個129円)も人気です。