東京随一の名水郷で、日本酒文化を丸ごと体験
新宿から電車で約1時間半。沢井駅に降り立つと、「ここは東京?」と驚くほど澄んだ空気や圧倒的な自然、濃厚な緑の気配に包まれます。
駅から多摩川の河畔に向かってなだらかに続く坂道をくだれば、東京の奥深さに触れる旅の始まり。徒歩数分で、歴史と風格を感じさせる白壁に「清酒 澤乃井」の文字が踊る、「小澤酒造」へ到着です。都内に卸されている日本酒の6割弱は「小澤酒造株式会社」で造られているとのこと。まさに“東京の地酒の代表格”です。
お酒の名前の由来ともなった「沢井」という地名の通り、この地は昔からそこここに清水が湧く、水に恵まれた土地だったとか。元禄15年(1702年)に、この地の利を生かして小澤酒造が酒造りをはじめてから、ゆうに300年以上。秩父古生層の岩盤を140mも手掘りで掘り抜いた「蔵の井戸」からは、今もとうとうと水が湧き出て、土地を潤し、酒を醸し続けています。
「酒造りの根幹は神様への供物。水を守ることはひいては山を守ることですから、100年後も変わらぬ環境を維持するため、このあたりの山や森一帯を守ることが私たちの務めと考えています」と23代目ご当主の小澤幹夫さん。
酒蔵見学で拝見が叶う「元禄蔵」は、創業時から使われ続けてきた蔵。入口に祀られた神棚を見上げると、ご当主の言葉とともに、自然の偉大さと幾世紀にもわたる人々の営みの歴史を感じ、祈りにも似た厳かな気持ちが湧いてきます。
小澤酒造では、その歴史と背景を伝えるために、昭和41年(1966年)に全国に先立ち酒蔵見学を始め、翌年には多摩川の河畔に庭園「清流ガーデン澤乃井園」を開園。その後、園内に澤乃井の酒やわさび漬け、酒まんじゅうなどを購入できるショップ、きき酒処、仕込み水で作る豆腐が主役の食事処、絵画や工芸美術などを展示する美術館などを開設し、人を呼び込み、観光蔵としての先駆者的役割を果たしてきました。
近隣の散策はもちろん、せせらぎとともに四季折々の植物や鳥の姿を愛でるもよし。園内のベンチやオープンデッキで軽食やお酒を楽しんだり、きき酒やショッピングを楽しむもよし。五感全てで自然を満喫できる「清流ガーデン澤乃井園」で、“東京の奥行き”に触れてみるのはいかがでしょうか。