Tokyo

12/22 (日)

日本の「茶文化」を広く知ってもらうために。時代に合わせて変化する「玉鳳堂」の柔軟さ

南青山骨董通りで、茶道具を取り扱う「玉鳳堂(ぎょくほうどう)」。名品を明治28年から取り扱いつづけ、雲州松平家や表千家といった名家の信頼を引き受け続けている老舗です。玉鳳堂の扱う貴重なお道具を実際に目の前で見せていただきながら、茶の世界で大事にされている精神やイノベーションの歴史について、四代目当主、山田高久さんに伺いました。

前編より続き〜

後半では、玉鳳堂のイノベーションについて詳しくお伺いしていきます。

これは昭和39年、世界からオリンピックにいらっしゃる外国人の方へ向けて、東京美術倶楽部が開いた日本美術の展覧会の写真です。

この当時、最高ランクの日本美術を外国の方にも対応できる形で披露しました。手前のご夫婦は男性の方が三笠宮殿下、隣のご婦人が妃殿下になります。右の外国人の方は、当時の国際オリンピック委員会(IOC)会長、アベリー・ブランデージさんですね。この方は美術品コレクターでもあられたんです。

そして、三笠宮殿下とアベリー・ブランデージさんの間のメガネをかけた男性が祖父になります。祖父はこの特別展の実行委員長をしていたんですね。

この展示イベントを主催されていたということですね。

はい、これが1回目のイベントでして、ここから日本の芸術を発信したいという気持ちがあったんじゃないかと。

お茶を海外の方に知ってもらいたいという思いですね。

現在もお茶をする方は減少しているので、もう一度お茶をする方を増やせるよう尽力していきたいですね。林さんもお茶をされるんですよね?

はい。下手の横好きですが。

いえ、うれしかったです。お茶は飲むだけと皆さん思われますが、飲み方、いただき方、振る舞い方はさまざまですし、お茶をすることで仲間も集まりますよね。お茶はそうしていろんなグループで、いろんな楽しみ方ができると思うんです。

わたしとしてはもう少しお茶のことを皆さんに知っていただきたい、そして少しでもやってみていただきたいという思いがありますね。

どういう風に入り口をつくるかという取り組みの一つがこうした展覧会だったというわけですね。

これは、私が父から受け継いだ店の写真です。右側の額に「清栄」と入っているのがわかりますか?

これは父がこのお店を開いた時に表千家の先々代御家元、即中斎宗匠からいただいた額です。その後はずっと、何があってもこれだけは掛けていました。

そして、次は何でしょう。

これは、入口のショーウィンドウですね。これは軸が宝珠、その下が備前です。気に入っている道具を飾ってとっておきたいと思いまして。花も飾れれば良かったんですが。

茶道は総合芸術ともいいますからね。さて、4代目にいたるまで、イノベーションに関連してどのような試みをされてきたかを教えてください。

時代に合う方法を模索しつづけることが大事

代々振り返りますと、仕事の内容や茶道の置かれる環境は変わってきています。そんななかで、今に合ったやり方をしていかないとダメかな、と思いますね。私はネットの販売なども大歓迎なんですが、その前にまず一度現物を見ていただきたいと思っています。実際に見て、もう一回よく考えて、ご購入いただくというのがこれから増えていくのではないでしょうか。

そうですね。具体的なイノベーションでいうと、初代はまず起業されたというのが大きいですよね。二代目はどんなエピソードがありますでしょうか。

先ほどの東京美術倶楽部で祖父は一時社長をしていたんです。戦後の好景気がつづくなかで、今でいう消費税にあたる物品税を美術品にはかけないよう働きかけたと話していましたね。

二代目では、新しくロビー活動なども頑張られたということなんですね。

三代目では、表千家など街の先生方の道具を扱うことが多くなります。商売的にも経済成長が続くなかでかなり頑張ったと思います。わたしの代ではそれを継承しながら、茶道具に限らず、自分がいいなと思うものを扱えればと。あとは、若い方にどうしたらお茶の良さがわかるかというのは常々考えています。

ECサイトをはじめられたというのも、四代目の新しい試みですよね。

これからはECサイトというのは本当に主流になってきますので。お茶に限らず日本の文化をECサイトで買って試してみる、というのは私はとてもいいことだと思います。

先ほどお話があったようにECサイトで買うのもいいけど、一度お店で現物を見るもの大事だ、ということですよね。

手に取っていただくと手に取った重さだとか見た目以外にわかる味わいがあります。2つ目以降はECサイトでもよいと思うんですが、最初はぜひ手にとって買っていただきたいですね。こちらとしても、どういったものかちゃんと説明をいたしますので。

ぜひみなさんもまずは店頭に来ていただきたいですね。そもそも、玉鳳堂というお名前は何に由来しているのですか。

お客様によると、「どこからかいただいた名前だよ」ということなのですが、現在確認中です。資料を探しているんですが、何しろ一度関東大震災で店が焼けてしまったものですから。

今、『キングダム』という漫画が流行っていますが、メインキャラクターのひとりが玉鳳隊という隊を率いているんですよ。若い人たちは玉鳳ときくと「おっ」と思うかもしれません。そうところがきっかけとなって、玉鳳堂に辿り着いてお茶や日本の伝統文化の世界に入ってきてくれるとうれしいですね。

まずは店頭で茶器を実際に見る。その上で、ECサイトを利用して購入する。時代の変化を嗅ぎ取りながらも、良いものをお客様に届けるための方法を玉鳳堂は提案しています。それこそが、日本の伝統文化を「守りつづける」ということなのかもしれません。

※この対談を動画で見たい方はコチラ

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