Tokyo

12/27 (金)

江戸べっ甲の伝統技術を繋ぎ、さらに江戸東京のブランドを発信する「石川べっ甲製作所」石川浩太郎さんに聞く<後編>

水と熱と圧力のみでタイマイの甲羅を貼り合わせ、美しい柄を作り出す「江戸べっ甲」。1802年創業の「石川べっ甲製作所」は、江戸べっ甲の装飾品を製造、加工、販売する老舗です。ワシントン条約によって原材料が手に入らない危機を乗り越え、この先も伝統技術を絶やさぬよう日々努力を重ねています。「agataJapan tokyo」を運営する株式会社スターマーク・代表の林正勝が、7代目の石川浩太郎さんにお話を伺いました。

べっ甲の時計バンド、壊れても直して長く使える

林:では引き続き、時計の製作工程についてお聞きしていきます。

石川さん:張り合わせの後、時計バンドのサイズに切り出し、熱して柔らかくした状態から型で曲げて形を作ったら、「磨き」の工程に入ります。先ほど曲げた下の部分は全く艶がない状態なので、手作業で綺麗に磨きをかけていきます。これでようやくべっ甲で作った時計バンドの完成です。ここに現物があります。

石川さん:1枚のべっ甲の柄に見えますが、先ほどご説明したように、実は上下で柄を合わせながら張り合わせて作っています。この厚みも、張り合わせてできています。万が一、この時計バンドが折れて壊れてしまっても、またべっ甲の生地を貼り合わせれば元に戻すことができるんです。べっ甲は、実はお直しもできる特殊な素材なんです。詳しくは我々のホームページでわかりやすく説明しておりますので、よければご覧ください。

林:最大どれくらいの厚みまで貼り合わせができるんでしょうか?

石川さん:何回かチャレンジしたことがありますが、大体20mmが一般的に考えられている厚みの限度です。それ以上厚みを持たせていくと、鉄板の熱が届かなくなるので、中身が張り合わせられないという難しさがあります。

林:一番厚くてどのくらいまであるんですか?

石川さん:うちでは作ってないですが、私が今まで見たものの中だと、20センチくらいの厚みがありました。何度も何度もサンドイッチ状に貼り合わせていったのだと思いますが、正直どのくらいの量で作られたのかは分かりません。

林:べっ甲はお直しをしながら使えるというのは、知らなかった人も多いと思います。長く付き合えるものであると認識を改めていただけそうですね。

べっ甲製品の特長や価格は?

林:べっ甲製品はいくらくらいで買えるのでしょうか?

石川さん:ありがとうございます。今回紹介している時計ですと、165,000円で販売しています。

林:例えば自分で時計を持ち込んで、それに合うバンドを作ってもらうこともできるんですか?

石川さん:もちろんです。オリジナルの幅、厚みで時計バンドを作ることもできます。

林:例えば自分で時計を持ち込んで、それに合うバンドを作ってもらうこともできるんですか?

石川さん:はい。なんとか。

林:色々なアプローチが楽しめそうですね。

石川さん:世界で一つの柄を楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。

老舗を継ぐということ

林:石川さんご自身についても聞かせてください。老舗を継がなくてはいけないプレッシャーはありませんでしたか?

石川さん:大人になるまではプレッシャーもなく自由奔放に生きてきました。私はサラリーマンを経験して会社に入りましたし、父親(=先代の英雄さん。“現代の名工”にも選ばれたべっ甲業界唯一の熟練職人)もべっ甲業界に携わった人間ですので、その存在は大きいですよね。何か圧力があるわけではないですが、今になってより父親の存在のプレッシャーを感じています。

林:お父様の年齢に近づいてきて、先代が考えていたことがわかってくるとより偉大さを感じるということですね。ご自身のお子さんに継がせたいとは思いますか?

石川さん:今のところは全くないです。もちろん好きで継ぎたいと言ってもらえるならいいですけど、私は自分の子供が継ぐべきという考えはあまりないんです。第三者でも、技術があり、この仕事が好きで、これでご飯を食べていきたいと考える人間がいたら、その方が継いでもいいんじゃないかなと、その辺は非常にやわらかく考えています。

江戸東京のブランドを発信していきたい

林:石川さんの考える、江戸東京のお店としてのブランドって何でしょうか?

石川さん:私どもは江戸・東京の文化として根付き、7代に渡って続けてくることができました。「温故知新」という言葉があるように、古いものがわかるからこそ新しいものを知ることができるのだと思います。江戸・東京とは何なのかを語る上で、過去の歴史、そして未来が見えて初めてブランディングできるのだと感じています。ですので、ブランドを語る上で「温故知新」という言葉が一番大事なポイントだと考えています。

林:歴史の中に新しいものを見いだして、それがブランドとして続いていくイメージですね。江戸東京ブランド協会のご紹介をお願いします。

石川さん:「江戸東京」の文化は、江戸開府から400年以上の歴史があるにもかかわらず、発信力の弱さや後継者不足もあり、なかなか広く伝わっていないのではないかという危惧がありました。そこで、継承と革新を進め、PR広報などの活動を行うべく、2021年の7月に一般社団法人江戸東京ブランド協会が立ち上がりました。私も理事で携わっております。今までの、べっ甲業界、蕎麦業界など、業界別に縦割りの文化だったものも、全て「江戸東京」という同じ文化なんじゃないかと我々は思っています。技術、工芸、文化、産業、これらが重なる中心に存在するのが、「江戸東京ブランド協会」というイメージです。横断的に組織しているところがこの協会の強みです。

林:最後に石川さんから、お伝えしたいことはありますか?

石川さん:これから江戸東京ブランド協会に関わる様々な業種の方々が、この配信(「江戸東京ブランド巡り」動画一覧はこちら)に参加されます。ご覧なっている皆様のライフスタイルのヒントとして、この配信を役立てていただければ幸いです。

石川さん:一般社団法人江戸東京ブランド協会の事業に対して、東京都の後援をいただいております。東京都でも「江戸東京きらりプロジェクト」に取り組んでいて、東京都と我々民間が一体となって、これからもしっかりと発信していきたいと考えています。ご興味ある方はぜひ「江戸東京きらりプロジェクト」もチェックしていただければと思います。

前後編に渡って「石川べっ甲製作所」石川浩太郎さんにお話を伺いました。原材料不足という事態を自分たちの行動力によって切り抜けた石川さん。江戸べっ甲のみならず、江戸東京のブランドを発信しようと取り組みを続けています。

※この対談を動画で見たい方はコチラ

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