Tokyo

11/21 (木)

ニーズに応え続けてきた結果、現在では仏具や神具の取り扱いも。188年の歴史を持つ「岡田屋布施」

浅草の国際通り沿いに店を構え、店頭には太鼓をずらりと並べている「岡田屋布施」。天保6年(1835年)に創業し、188年もの歴史を持ちます。そのはじまりは道具屋。やがて能楽の鼓や太鼓の商いをスタートさせ、現在では祭礼の太鼓や歌舞伎の鳴物、仏壇、仏具なども取り扱っています。そんな岡田屋布施の七代目ご当主、布施義浩さんにお話を伺います。

まずは会社のご紹介からお願いします。

創業は天保6年、1835年と聞いています。

もともとどのような形でスタートされたのでしょうか。

今の駒形の場所に岡田屋という店があったんですね。その岡田屋で初代が小僧として働いておりまして、丁稚から奉公して、番頭にまで上がってきたわけです。それでのれんをいただいて、田原町にのれん分けでお店を始めたと聞いています。

そうなのですね。のれん分けいただいて、どんな形でスタートされたのですか。

天保6年という時代背景もありますが、その頃、歌舞伎の劇場が浅草に集まりました。弊社は劇場の出入り業者でもあったらしく、その劇場に向けた邦楽器を納めていました。鼓だったり太鼓だったりといった楽器を納める仕事から始まったと聞いています。その邦楽器、伝統楽器っていうものの商いから仕事がスタートしました。その頃の浅草というのは一大歓楽街だったので、吉原遊郭もありました。昔の邦楽器というのは、今でいうポピュラーな楽器で、音楽として唯一の楽器という時代でした。そういった太鼓、鳴り物屋として始まったそうです。

こちらの写真は現在の店舗です。

もう創業のときから同じ場所でおやりになっていますね。

そうですね。次は店内の写真です。もともと鳴り物屋から始まっていますが、明治以降は鳴り物太鼓店から、神様のお神輿や、神仏具を扱うようになりました。本業は鳴り物屋からスタートしているのですが、現在はこういった仏壇も扱っています。

素人の目からすると、どういった繋ぎ目があるのか気になります。事業自体もどういった連続性とか関連性があるのかといったところを知りたいです。

太鼓自体は楽器というスタートですが、お寺で使われる太鼓もあれば、神社で使われる太鼓もあります。使われる場所で需要があるものなのです。あと地域性もあります。浅草という場所は門前町なので、「お寺さん」が非常に身近な地域なんですね。神社も多く古刹が多いところなので、そういったところからこういう仏具関係をやっています。太鼓に関連しているようで、実は地域性によるところが大きいかもしれません。

あと、例えば職人さんができることでの共通性はありますか。

そうですね、太鼓の部分と、あと神輿ですね。神輿に関して漆を塗ったり、生地を作ったり。そうした部分は共通するところです。今の仏壇は少しずつ構造が違いますが、昔の仏壇は漆で塗って、金箔で押してというような共通の日本の伝統技術が使われていましたので、そうした部分でも共通していたと思います。

そういうところで言うと、神社とかお寺とかへ出入りするうちに、例えばお神輿を作りますよっていうお仕事が先にあって、そのお神輿技術を転用して、お寺にも出入りしているから仏壇とかも作れるんじゃないの、みたいな。そういう流れですか?

そうですね。やっぱりニーズに応えていったのかなと思います。

そうですね。マーケットがあるところに応えていったのですね。それは何代目の頃のお話でしょうか。

多分ですが、明治大正期頃だと思います。なので、自分のひいおじいちゃんかと思います。

じゃあ三代目の頃?

そうですね。その頃だと思います。

じゃあ三代目の頃に、そういう仏具系の新しいビジネスも、ある種、これもイノベーションなのかなと思いますね。お客様の要望に応じて拡張されたということですね。

祭礼の笛や鐘、バチ、提灯など多様なものを取り扱う

次の写真も店舗の、店頭の写真です。ちょっとごちゃごちゃしていますが、いろいろな物を扱っているので、こういった感じの店舗になります。

ここでは太鼓以外の話をお伺いしますが、左側に何か結構いろんなものがありそうです。

太鼓以外ですと、やはり祭礼に使う笛や、あとは鐘です。そういうお祭り関係で使うものがこちらのコーナーにあります。太鼓のバチもあります。

写真左奥の棚のところがバチですね? 奥に向かって並べてありますね。

あと、お祭りで使う提灯などもあります。

提灯とかは名入れなど、いろいろなオーダーがあるのでしょうか。

そうですね。名入れ提灯もします。提灯は本当の提灯屋さんにお願いして作っていただいています。うちの職人が書いているわけではないのですけれども。

そうすると、この中でいくと自社として「ここは職人さんを抱えてやっているんだよ」という物は、太鼓ですか。

 

そうですね、太鼓は全部自社で、一から十まで製造しています。あとお神輿ですね。お神輿も自社で製造しています。

あと仏壇もそうなりますか。

仏壇に関しては、完全に自社で製造しているものは今はありません。

作り方が変わってしまったからですね。逆にそこも革新をしてきているというか、時代に合わせて、そこは今のやり方でやっているところにお願いをしているのですか。

はい、今のやり方でやれる職人さんに依頼して作っていただいています。

伝統楽器はオーダーメイドで作るお客様も

そういうことですね。ありがとうございます。そして、恐らくこれから太鼓の話に入っていくと思いますが。次の写真は、ずいぶんたくさんの太鼓がずらりと並んでいます。

こちらも店舗の写真になります。こうしてたくさん展示しているような店なんですが、オーダーをいただく場合と、こうしてすでに作ってある太鼓から選んでいただく場合があります。やはり「音のもの」なので、実際の商品を叩いて、お気に入りのものを探していただく。そういったこともやっています。

これ、なかなか難しいですね。在り物がいい人もいるのかもしれないですし、確認してからという方もいるかも。

そうですね、やっぱり音のものなので、一つひとつが違います。自然のものを使って、張っていますので、全く同じものは一つもありません。

布施さんの「音のもの」という単語を使われるので、そこが何となく業界用語っぽいですね。

業界用語ではないと思うのですが、通常、弊社で扱っているような言葉なので、そういう意味では業界用語なのでしょうね。

「音のもの」に含まれるのは、太鼓だったり鼓だったり、鐘や笛だったり?

はい、それが日本の伝統楽器になるかと思います。

道具屋からスタートし、伝統楽器のみならず仏具や神具も取り扱う「岡田屋布施」。ラインナップの変化を辿っていくと、根底にあったのは「ニーズに応えてきた」ということ。それもまたイノベーションの形と言えるでしょう。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ

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