西京漬といえば味噌によって魚の美味しさが引き出される、日本の食卓において非常に身近な食品です。昭和12年(1937年)創業、約80年つづく日本料理店『蔦の家』の看板商品のひとつがその西京漬の最上品ともいうべき『京華漬』。贈答品としても愛されている『京華漬』にはどんな工夫が込められているのか? 『京華鮨』『京華燻製』など独自の逸品はどのように生み出されたのか?
蔦の家三代目ご当主の一萬田英希(いちまだ ひでき)さんに、『蔦の家』ブランドのおいしさの理由とブランディングの工夫について伺いました。
前編の記事
貴社ブランドの一つである『京華燻製』についてお伺いできますか?
弊社の人気商品『京華漬』を燻製にした商品です。若い方々を中心に食卓の欧米化・ファストフード化や、調理が面倒という声が多く聞かれることを背景に、魚を食べる機会をもっと手軽にご提供したく、魚介類の西京漬を燻製にいたしました。
一度西京漬をつくったうえで、それをさらに燻製した商品なのですね。
『京華漬』の製造に2~3日かけ、そこからさらに長時間、チップで燻製にしております。
非常に手間、時間がかけられていますね。
こちらは冷凍状態で販売しておりまして、解凍後すぐに召し上がっていただける商品となっております。
『京華漬』とはまた楽しみ方が違いそうですね。
白いご飯にぴったりな『京華漬』に対し、こちらはお酒のおつまみとしても非常にマッチする商品です。和食だけでなく、洋食やワインと合わせても楽しんでいただいております。
解凍後、加熱調理などの必要なく、すぐに食べられるのも『京華漬』とは違った部分ですね。しかし、どうして“燻製”という発想が浮かんだのですか?
私は個人的にお酒好きでして、そのおつまみとして合うものがないかと試行錯誤する中で“西京漬を燻製する”という発想に至りました。
日本酒以外のいろいろなお酒にも合いそうですね。
ワインなどにも非常に合います。味噌漬にした魚介類を燻製にすることで、西京焼とはちがったしっとりした食感となっており、味噌の味と香りの深みが楽しめる商品となっております。
『京華燻製』ロゴに込められたブランディングの工夫
『京華燻製』はブランディングの面でも工夫されているとお聞きしました。
『京華燻製』は西京漬を用いた商品ではありますが、あえて『京華漬』とは別のブランドロゴを作成しております。
ロゴを見た瞬間に燻製の商品だとわかるようにされているということですね。
ロゴに使われた2色のうち、赤は「火」を、黒は「煙」を表しており、わかりやすく燻製のイメージをお伝えできるように工夫しております。また、こちらはご贈答用としてお届けすることも可能な商品です。
保存などはどのようにすればよいのでしょうか?
冷凍で1年、冷蔵でも3週間賞味いただける商品ですので、冷凍庫に保存いただき、いつでも冷蔵庫に移して解凍し楽しんでいただけます。
「今日の夜、家でごはんを食べようかな」と思って、朝、冷蔵庫に入れておけばその夜にはもう食べられる状態ということですね。
『蔦の家』がブランドを守るために大切にしていること
一萬田さんにとっての『蔦の家』ブランドというテーマについてお話いただけますか?
弊社ブランドでは、昭和12年から約80年間で培った歴史や味噌、切り技、素材などの伝統を大切にし、こだわりの商品を作り上げることを重視しております。そのため、ご贈答用で利用されるお客様も多く、箱を開けた段階で上質感や特別感を再現できるよう気を付けています。また、創業以来手作りの伝統を守っており、作り手のマネジメントや気持ちにも日々気を配ることを心がけています。
『蔦の家』の味を維持するためには、日々丁寧に仕事をおこなう人間の手、心が重要ということですね。
はい。伝統やこだわりの素材で満足のいただける上質感や特別感を生み出していきたいと思っております。そのうえで、これまでの技術を守りつつ新しいことにも挑戦していければと。
伝統を守るうえで変える部分、変えない部分の選択は老舗にとって大きなテーマとおみうけします。『蔦の家』としてはその点、どのような考えをお持ちですか?
『京華漬』などは、切り技や味噌床の管理、温度管理、漬け込み時間などは、これまで同様、しっかりと継承していきたいと考えています。
それでは最後に、一萬田さんより、読者の皆さんにメッセージを一言いただけますか?
東京メトロ「四谷三丁目駅」の近くで営業している『蔦の家』は、西京漬のお弁当などご家庭で楽しんでいただきやすい商品もたくさん取り揃えております。お近くにお立ち寄りの際はぜひお店にもお越しくださいませ。
西京漬というと日本の食卓において非常にポピュラーな食品であり、食べたことがあるという方は非常におおいでしょう。しかし、味噌床づくりからスライス法、包装に至るまでこだわりがつまった『蔦の家』の『京華漬』はきっと、これまで味わったことのない食の喜びを私たちに感じさせてくれるはずです。
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