江戸時代から受け継がれる技術で表具に命を吹き込む
掛け軸や額、屏風などの表具の製作や修復を扱う、天保年間から続く表具店。表具店そのものの歴史は古く、奈良時代にはすでにさまざまな仕事を手掛けていたと言われています。しかし、かつては数多くあった表具店も戦後には50軒にまで減少、現在では5軒ほどしか残っていません。そのなかでも経新堂 稲崎は、「大経師」の称号を得て朝廷に仕えていた唯一無二の存在です。
主な仕事内容としては、掛け軸や額、屏風、ふすまなどをつくったり、お茶室のしつらえをしたり、さらには美術品や工芸品の保存修復などがあげられます。特に、美術館に保管されているような作品のメンテナンスを得意とするのが、経新堂 稲崎の強み。確かな技術で修復をすれば、以降100年以上そのままでも保存できるような形に蘇らせることができるそうです。
今の時代、機械でも製作できますが、化学のりを熱で圧着してつくると、どうしても長い年月はもたないことが多いそう。一方、古糊(ふるのり)を使い、厳選した和紙を使って、熟練した職人の手で作り上げた表具は、末永く後世まで残していけます。
今後は伝統の技を若い職人たちに伝えていくと同時に、着物や帯の布をリメイクした掛け軸など、現在のライフスタイルに合わせた提案にも力を入れるなど、表具のさらなる普及に努めています。