鰹節もブランドも鮮度が命。新しさを大切にする鰹節専門店
にんべんのヒット商品といえば、オレンジ色のラベルでおなじみの「つゆの素」。「我が家でもこの一本は必ず常備していて、幼い頃からこれで育ちました。高校時代からは自分で鰹節を削ることもよくありましたね」と微笑む13代目ご当主・髙津伊兵衛さんによれば、「つゆの素は、昔は甘口と辛口がありましたが、今は一本化しています。最近はプレミアムクラスの『つゆの素ゴールド』シリーズの人気が高まっています」。
鰹節一筋の軸は貫きつつ、時代の空気を捉えた新しい商品を生み出し続けているにんべん。「COREDO室町1」(東京・日本橋)に入居する「にんべん 日本橋本店」をのぞいてみると、400種類を超えるユニークな商品がずらり。さらに、店内には、鰹節の削りを実演販売する「日本橋削り場」、 “一汁一飯”をコンセプトにかつお節だしを使ったスタンディングバー「日本橋だし場」も併設。
「ここはもともと移転を前提とした仮店舗でした。どうせ“仮”なら、削りたての鰹節を試食したり、できたてのだしを味わったりできる“体験型”にしてみたかった。いわば実験だったんです」と2010年のオープン当初を振り返る髙津さんですが、蓋を開けてみれば大ヒット。そのままこの店を本店と定めて今に至るとか。ちなみに、日本橋だし場の「かつお節だし」(1杯100円)は2021年に累計98万杯を突破したというから人気ぶりがうかがえます。「新しいものを取り入れることこそ、にんべんが320年という長い歳月を生き抜いてこられた秘訣。思えば、“現金掛け値なし”のような新しい決済スタイルを導入したり、『本枯鰹節』が世の中に登場した際もいち早く扱ったりして、多くのお客さまの支持をいただいてきました。伝統も大切ですが、私たち自身がワクワクしながら新しいことを取り入れて進むことも重要です」。
にんべんは今、海外市場でも成長中。「2015年と比較すると、商品の輸出量は約2倍になりました。鰹節はまさに日本の誇り。これを後世に伝えつつ、世界の人々にもだしの美味しさを知ってもらえたらうれしいですね」。