店全体から伝統工芸品へのこだわりが伝わる鼈甲専門店
江戸時代から参拝・行楽の地として栄え、いまも亀戸天神、東京スカイツリーなどの人気スポットを訪れる人で賑わう亀戸。その街の一角に、経済産業省指定の伝統的工芸品・江戸鼈甲(べっこう)専門のお店「江戸鼈甲屋」はあります。
鼈甲とは、カリブ海、インド洋の海域に生息するウミガメ「タイマイ」の甲羅を加工してつくられたもの。1枚の厚さが非常に薄く、つくる際は何枚もの鼈甲を重ねるのだそう。重ねる鼈甲の種類によって柄に違いが生まれるため、出来上がった商品は常に唯一無二のもの。
それだけに、鼈甲商品は完成までに多くの日数を要します。また店舗から徒歩10分ほどの距離にある「石川べっ甲製作所」でつくられるそれは、使用する鼈甲の種類や部位、お客様の要望によって工程も細かく変わるとのこと。「お客様が満足してくださる商品をつくるためには、一つひとつの工程を大切につくり上げていきます」と7代目・浩太郎さんは語ります。
また鼈甲商品に対する熱い想いは販売方法にも現れており、江戸鼈甲屋では卸売業者や小売店を通さず、つくり手がお客様と直接繋がるようにしています。この試みは、現当主の浩太郎さんの代から始めたこと。「店頭に並ぶ商品から選んで購入いただく際も、鼈甲にかける思いや完成までのプロセスをつくり手から直接伝えて、納得して買ってもらいたい」、「オーダーメイド希望のお客様ともつくり手が直接話して、より納得していただけるものを作りたい」という強い思いが秘められているのだそう。
店内のしつらえにも、お客様にさまざまな伝統工芸に関心をもってもらいたいという想いがこもった工夫が。輪島塗りや江戸組子が施されたカウンターテーブル、漆喰で塗られた壁、さらには「お店が1000年続くように」という願いのもとに設置された屋久杉を使用した大きな柱型のショーウィンドウなどにも、お店を訪れたらぜひ注目してみてください。