「温故創新」の精神で、時代を先取りする佃煮を開発
浅草から東京スカイツリーを目指して吾妻橋を渡ると、海老屋總本舗が見えてきます。朝9時の開店と同時に、詰め合わせを求める地元の方が続々と来店。浅草で長年愛されてきた歴史を感じさせます。
海老屋總本舗の社是は「温故創新」。その社是の通り、伝統を守りながら、革新的な佃煮を世に送り出してきました。2代目当主の利助は、“江戸は辛口”が当たり前だった時代に、関西修業を経て砂糖を加えた上方風の甘辛い味付けを確立。4代目当主の利雄は、戦後の健康意識の高まりから、塩分控えめの「若煮佃煮」を開発。いずれも世間に驚きと感動を与え、映画監督の小津安二郎など文人墨客からも重宝されてきました。
平成24年(2012年)にすみだ地域ブランド「すみだモダン」にも選ばれた若煮佃煮は、海老屋總本舗の看板商品。塩分量を従来の佃煮より3割程度抑えつつ、砂糖や醤油、水飴などで煮詰め、上品でコクのある味わいに仕上げています。このシリーズの一番人気・たらこをはじめ、細切昆布、あさり、しじみ、まぐろ旨煮など、箸が進む商品が目白押しです。
5代目ご当主の川北学さんは、先代の味を受け継ぎながらも、令和にあるべき佃煮の将来を見据え、日々商品開発を行っています。令和4年(2022年)春からは、昨今の辛味ブームを受けて、ピリ辛の「若煮唐辛子きくらげ」(540円)を販売開始。佃煮=ご飯のおともという固定観念から脱却すべく、ご近所のアサヒビールとコラボレーションをして、ワインと佃煮のマリアージュを提案するなど、新たな取り組みを行っています。
「佃煮は手軽にいただける副菜。忙しいときにも小皿でさっと出すだけで食卓が彩られます」と川北さん。現代的な食生活にも取り入れやすく、一汁三菜を保てるところも佃煮の魅力です。店頭でおすすめを聞きながら、自分好みの一品を見つけるのはもちろん、大切な方への贈り物にもどうぞ。