“一代一菓“の心得を継承、代々進化を続ける和菓子店
銀座7丁目から築地5丁目までを結ぶ中央市場通り。高いビルが立ち並ぶその通りの一画に、110年以上の歴史を持つ和菓子の老舗「清月堂本店」はあります。
かつて京橋木挽町と呼ばれたこの地に水原嘉兵衛氏が創業。鹿児島から「何かを始めたい」という思いのもと上京後、親戚から「手に職をつけた方がいい」とアドバイスを受け、日本橋小網町の和菓子屋にて修業を始めたのが、清月堂の始まり。現在は4代目の康晴さんが当主を務めます。屋号「清月堂」は、創業地の近くにかけられた橋から見える美しい月の情景に由来しているそう。
そんな「清月堂本店」が、継承してきたのは、“一代一菓”の心得。つまり代々で1つのお菓子を受け継ぐのではなく、自分のお菓子を持つこと。初代・嘉兵衛氏は水羊羹や葛桜などの生菓子、2代目・清一氏は干菓子と半生菓子を詰め合わせた「江戸好み」、3代目・正一朗氏は卵餡の時雨菓子「おとし文」、現4代目・康晴さんは「あいさつ最中」と、各世代で代表菓子を生み出してきました。
また店頭に並ぶ和菓子は、移り変わる趣味趣向に合わせて少しずつ味や食感に変化を加えているとのこと。「魅せる和菓子も大切だが、やはり和菓子は食べるもの。食べるための和菓子をより大切にしていきたい」という初代の言葉も受け継いできたと康晴さんは語ります。生み出されたものをただ守るだけではなく、常に時代に合ったものを追究し、新しい要素として取り入れていく。これも清月堂の魅力です。