着物好きの羨望を集める小紋・浴衣染めどころ
竺仙といえば、着物好きにとっては浴衣の一大ブランドであり、優れた染めと意匠の代名詞でもあります。百貨店や呉服屋の店頭で、とっておきの品として紹介される竺仙のすべてに触れることができるのが、日本橋小舟町の竺仙本店。木枠の引き戸を開けて「竺仙」のふた文字が染め抜かれた暖簾をくぐると特別なお誂え体験が始まります。
靴ぬぎと小上がりをぬけ、2階の小座敷へ。ここで、豊かな知識を備えたスタッフがたくさんの反物の中からお客様に合いそうなものを選び、次から次へと広げて見せてくれます。生地の特性、柄に込められた意味、染め方の違いの説明を受けながら、自分だけの1枚を選び、採寸、仕立ての手配までを行います。
まずは生地。例えば、今広く知られる綿コーマ、綿紅梅といった浴衣生地は、染めの鮮やかさや着心地、着映えすべてを叶えるために竺仙が開発した布です。次に意匠デザイン。一流の筆を大切にした、竺仙の美意識に貫かれた意匠が多数伝わっています。そのせいでしょうか。今の若い人にも共感を持って迎え入れられる昭和初期の柄も多いのだそうです。そして職人の技です。型紙を起こす職人、染めの職人、配色の妙味。職人の力を引き出し、技術を組み合わせ、商品の質を高め整えることは本物の職人技とその価値を知っているからこそできる仕事です。
竺仙の反物の耳にはイヤーマークと呼ばれる青の線、さらに反物のたれには必ず「竺仙鑑製」と染め抜かれているのをご存知でしょうか。この「鑑」の文字に込められているのは真の見本・手本となる製品づくりをするのだ、という思い。匠の技の価値を知る竺仙の矜持が込められた、自分の製品に徹頭徹尾責任を持つという覚悟です。