江戸時代から160年以上に渡り愛さる栗むし羊羹の元祖
店内に一歩入ると、ショーケースには所狭しとお菓子が並んでいます。その真ん中にずらりと整列しているのは、初代から受け継ぐ「栗むし羊かん」。元祖ともいわれ、160年以上も時を経た今なお不動の人気を誇る看板商品です。小麦粉とこしあんを練った生地に、蜜を含んだ栗の甘露煮をのせて蒸しあげたもので、甘さ控えめでむっちりした食感となめらかな舌触りが評判。初代から受け継いだレシピを少しずつアップデートしており、職人がその日の天気や原料によって変わる生地の表情をみながら、丹精を込めて練り上げます。
脇を固める商品は、長崎カステラよりも小麦粉を多く使用した素朴な味わいの「東京かすていら」や、ブッセにあんずジャムやチーズバターをサンドした「羽衣」など、固定ファンのついている人気のお菓子もたくさん。「栗むし羊かん」を目当てに訪れても、ついつい目移りしてしまいそうです。
店の信条は「機械ではなく人の手で」「水菓子のように季節を感じる味を」。冬はどら焼きに雪の結晶の焼印を入れ、お釈迦様の誕生日である花まつりには限定菓子「いただき」を販売するなど、季節を感じられる限定商品があります。毎年恒例の季節限定商品を、今か今かと待ち望むお客様も少なくありません。アニメなどの流行りものの練り切りをSNSで発信したことでも、一躍話題に。伝統を守りながらも、遊び心をもって新しいお菓子づくりにチャレンジしていることが、長年お客様に愛されている理由なのでしょう。
老舗を守る秘訣をたずねると「周りの商店の皆さんとお客様の支えがあってこそ」と5代目当主の西村淳さん。長年、浅草の地で店を構え、商店の人々と支えあって店を営む「龍昇亭西むら」らしいお答えです。