やさしい味に真心を込めて新たな発信を
銀座の顔ともいえる歌舞伎座のすぐ近くに新しく本店を構えた「MATSUZAKI SHOTEN (銀座 松崎煎餅 本店)」。松の紋をくっきり染め抜いた濃紫の大暖簾が遠くからも目をひきます。暖簾をくぐって店に入れば、真っ先に目に入るイートイン用の大テーブルのせいでしょうか、広々と洗練された空間にもかかわらず、どこかくつろげる雰囲気。壁に据え付けられた棚と中央の平台には、さまざまな煎餅が品良く並べられており、品選びもしやすいゆったりとした売り場です。
松崎商店といえばなんといっても「大江戸松崎 三味胴」。三味線の胴になぞらえた名前の瓦煎餅は、その名にふさわしく風雅な銘菓です。焼印や、色にこだわって着色した砂糖蜜で描く絵柄は、1枚ずつ手仕事で仕上げられる一期一会の芸術。波に千鳥、柳にツバメ、雪持ち笹といった粋な江戸前の柄や、キューピッドや白鳥、季節の花などのかわいらしいモチーフが、季節感とストーリーを運んでくれます。前職で映像やデザインに携わってきたご当主の松崎宗平さんが企画した、アーティストとコラボレーションしたポップなシリーズなど新たなバリエーションも。「伝統の味は大切にしながらも、店舗づくりや新たな商品開発により、新しい価値観をお届けしたいんですよ」と松崎さん。
結婚式の引き出物や内祝い、会社の周年記念品などのために、オリジナル柄も100枚から注文でき、品格とかわいらしさの両方がかなうギフトとして人気です。
図案の美しさを引き立てる煎餅生地にも注目です。気候にあわせ、生地の調子を見ながら職人が焼き上げる生地は、どこまでもなめらかでキメが細かく均一な焼き上がり。断面も至極美しく、口に入れれば、卵やみりんとあわさった小麦のやさしい甘さがほろほろと広がります。この生地のよさが松崎の煎餅の品格を支えているのです。
本店限定のイートインメニューをいただきながら一息つくもよし、お買い物をするもよし。大テーブルのそばでは、松崎商店の歴史を見つめてきた振り子時計が今も変わらず時を刻み続けています。