Tokyo

11/21 (木)

文豪たちが愛した逸品! シンプルを極めた「羽二重団子」の魅力とは

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日本は、百年続く老舗が3万3,000軒以上存在する世界でも稀な国。そのご当主に、老舗を老舗たらしめる“五つの奥義”を伺う連載記事。今回お話を伺った老舗は、文政2年(1819年)創業、正岡子規や夏目漱石ら名だたる文豪たちも愛した老舗の団子屋『羽二重団子』です。味付けは醤油のみ。素材の美味しさをそのまま味わう“シンプルを極めた団子”とは?

絹織物の羽二重のようにキメが細かい「羽二重団子」

「団子作りにおいてはとにかく手間をかけています。シンプルなものは誤魔化しがきかないですからね」


そう語るのは、『羽二重団子』七代目ご当主の澤野修一さんです。


光沢感と粘りがあり、シコシコした歯ざわりが楽しめる「羽二重団子」。絹織物の「羽二重」のようにキメが細かいため、そう名付けられました。


羽二重団子は平たい形をしているのが特徴です。そもそも団子は、神仏の供え物として丸いものを積み上げる「団喜」を原型として中国から伝わってきました。しかし、神様の供え物を庶民が口にするのは憚られると、このように形を変えて販売することになったのです。


実際に焼き団子を平たくしてみると、この形の方が芯まで火が通るということで、以来ずっと平たい形を突き通しています。


羽二重団子は、夏目漱石や正岡子規など、日本を代表する文豪たちにも愛されました。特に正岡子規は明治35年に亡くなるまでしょっちゅう食べていたようで、寝たきりになっていた頃に書かれた『仰臥漫録』という随筆にも「あん付き三本焼き一本食ふ」と書いてあるほど。

「ものすごい食欲で、生きることが食べることであったのかもしれません。そういう壮絶な日記に書き留めてくださったのはありがたいことです」(澤野さん)

老舗 五つの奥義その1:二度焼き二度浸けすることで味がよく染み込む

羽二重団子には、焼きの工程が二度あります。最初に裏面を焼いて焦げ目をつけ、醤油につけて表面を焼き、最後にもう一度醤油をつけて仕上げます。一度焼いた後に醤油をつけることで生地に味がよく染み込むのです。

味付けは、江戸期の当初から、キッコーマンの濃口醤油をずっと変えることなく使っています。店独自の配合などはなく、言うなれば生醤油そのものの味わいなのです。


「シンプルな製法で、素材の味をそのまま引き出しています。滑らかな舌触りと醤油の香ばしさが唯一無二の味わいです」(澤野さん)


餡団子は、小豆の風味を生かすため砂糖の使用を控えめにしています。煮上げる時間によって柔らかくなったり固くなったりするのですが、比較的“固め”に仕上げるのがコツです。

老舗 五つの奥義その2:1粒1粒心を込めて団子は手刺し

職人の手によって平たく成形しているため、機械化することはできません。団子一つひとつの形が微妙に違っているのは手刺しならではの特徴なのです。

「『団子作りにおいては手間をかけろ』という言い伝えが第一ですね。1粒1粒心を込めて串に刺していきます。もちろん生地作りにも手間がかかっています。臼と杵で団子の生地をつくのですが、『他所が300つくならうちは600つけ』という口伝が残っているように、とにかくよくつくのがこだわりです。現在は900回くらいついています」(澤野さん)

老舗 五つの奥義その3:「焼」と「餡」の生地は水加減を変えて

焼き団子と餡団子、2種類の生地で水加減を変えています。焼き団子は火を入れた後に生地がダレてしまうことがあるので、少し固めに。餡団子はそのまま食べるので柔らかめに調整します。

水分量は明確に数字が決まっているわけではなく、その日の湿度によっても変化します。団子に使うお米は、山形県庄内地方から取り寄せたものを独自で製粉しているのですが、新米であるか古米であるかによっても、水分量がガラッと変わるのです。その辺りの調整が非常に難しく、熟練の技が光ります。

老舗 五つの奥義その4:岡倉天心も通っていた。甘味処だけど酒も飲める

お店のメニューを見ると、ビールや冷酒の文字が並んでいます。甘味処なのに? と意外に感じるかもしれませんが、街道筋の茶店だった時代から、お茶とお酒の両方を提供していたのだそう。

「初代・庄五郎が藤の木茶屋を開業し、明治に入ってからも酒屋も兼ねていたと伝わっています。岡倉天心さんも店でお酒を召し上がっていたことが、長男である岡倉一雄さんの随筆からわかっています。あるとき天心さんが乗っていた馬だけが帰ってきて、家族がそこら中を探し回ったら、『芋坂(日暮里)の団子屋で陶然として帰るを忘れていた』との記述が残っています」(澤野さん)


当時の人々がどういう心持ちで焼き団子と酒を食していたのか体験してほしいという思いで、現在も変わらず店でお酒を提供し続けているのだそうです。

老舗 五つの奥義その5:団子の美味しさを守りながら、小さく変化する

老舗 五つの奥義その5:団子の美味しさを守りながら、小さく変化する

「美味しいと言ってくださった正岡子規さんをはじめ、多くの方々が召し上がったであろう、その時代のお団子を、できる限り今日も再現していきたいです。“日持ちが効く”とか“売りやすい”とか、いろんな誘惑があったとしても、やはりそこだけは曲げないでいたいと思っています」(澤野さん)

老舗が続いてきた理由は?

老舗が長く続いてきた理由として、「商売を手広くやりすぎない」という家訓があると澤野さんは言います。


「団子というのは日持ちが効きかなくて、当日限りの儚い命の商品なんです。ですからあまり商売を広げすぎずに、地道にやってきたのがよかったのではないかと想像しております」(澤野さん)


これからも、原点を忘れずに革新的なことにもチャレンジしていきたいと澤野さんは語ってくださいました。


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「五つの奥義:羽二重団子編」の動画はコチラから

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