新しいおいしさを見つけて、そばの可能性を広げたい
総本家更科堀井は、現在9代目の堀井良教さんがご当主を務めています。
メニューは、伝統の「さらしな」と、さらしなに季節の食材を入れた「季節の変わりそば」、自家製粉の「もり」「太打ち」が柱。それぞれ、シンプルなせいろから、天ぷらやかしわ(鶏肉)などと合わせたものや、カレー、鴨南蛮まで、さまざまな食べ方で楽しめます。
「総本家更科堀井」として再出発させた8代目の願いであり、現在のご当主も大切にしているのが、「おいしいそばを真面目に出す店を家業として続ける」こと。常においしさを求めて挑戦を続けてきました。
転機は「総本家更科堀井」となって7~8年後。厨房を大きく改装し、先祖と同じ方法である「自家製粉」と「手打ち」に方向転換したことでした。「もり」と「太打ち」は電動の石臼で製粉。これにより、そばの実の個性や求める味に合わせて微調整できる上、そばのおいしさの決め手といわれる、挽きたて・打ちたて・ゆでたての“三たて”でお店に出せるようになったのです。
原点回帰を機に、わざわざ遠方から食べに来るお客様も増えた「総本家更科堀井」ですが、堀井さんは、伝統の味を大切にしつつも、変えるべきところは変えて革新を重ね、お客様を喜ばせ続けたいと話します。
立川・日本橋・NYにもお店がありますが、店長は20代の若手が務め、店ごとに考案するメニューもあるそう。「ここまで店の個性があるのも珍しいと言われますが、『総本家更科堀井』はおいしさを求めていろんなアイデアを生みだす人材が育つ場でありたいと考えています」
堀井さん自身も麻布十番の本店の厨房に立つ一方、食材の生産者や、イタリアン、フレンチなど異分野のシェフとのコラボレーション、遠方の人にもお店の味を届けられる半生・冷凍商品の開発などに積極的に取り組む日々。
「そばは大きな可能性を持つ食べ物。新しいおいしさを見つけることで可能性をさらに広げたいですし、いずれは飲食業全体の価値を高める一助になりたいですね」