Tokyo

10/12 (土)

昭和12年(1937年)創業、日本の魚食文化を美味しさで支える『蔦の家』。西京漬の進化系でもある『京華漬』とは

西京漬といえば味噌によって魚の美味しさが引き出される、日本の食卓において非常に身近な食品です。昭和12年(1937年)創業、約80年つづく日本料理店『蔦の家』の看板商品のひとつがその西京漬の最上品ともいうべき『京華漬』。贈答品としても愛されている『京華漬』にはどんな工夫が込められているのか? 『京華鮨』『京華燻製』など独自の逸品はどのように生み出されたのか?

蔦の家三代目ご当主の一萬田英希(いちまだ ひでき)さんに、『蔦の家』ブランドのおいしさの理由とブランディングの工夫について伺いました。

看板商品『京華漬』が意味するのは“京都と江戸の融合”

まずは自己紹介をお願いいたします。

蔦の家三代目の一萬田英希と申します。弊社には先代にお誘いいただいて入社し10年ほど働いたタイミングで「代を変わってほしい」とお声がけいただきました。伝統の商品を守りつつ、新しい商品開発などに積極的に取り組んで頑張っております。

店は昭和12年(1937年)創業、四谷四丁目で和食割烹としてはじまり、約80年近く営業しております。政財界や著名人の方々にもご愛顧いただき、なかでも多くの方に愛された西京漬をご要望にお応えする形で、販売するようになりました。西京漬には魚介類・肉類と種類がございまして、お弁当などご自宅用のお求めやすい商品もご用意しております。

四谷で長い歴史を築かれてきたお店でございます。西京漬など商品についても詳しくお伺いできますか?

 

独自に『京華漬』と命名された弊社の西京漬の特徴は、醤油ベースで生み出された秘伝の“かえしだれ”を混ぜ込み、寝かせた「味噌どこ」を使っているということです。

味噌自体にはどのようなこだわりがあるのでしょうか?

 

西京味噌のほかに、甘みの強い京都のお味噌など2種類の味噌をブレンドしています。そこにかえしだれを加えることで独特の味わいを表現しております。

なるほど。

『京華漬』の『京』の字は、西京漬の生まれ故郷、京都に由来します。京都でも美味しく食べられるようにと、魚を味噌漬として保存したのが西京漬のはじまりです。平安時代に誕生し、室町時代の中期ごろに一般的に広まりはじめたといいます。

西京漬にはそのような長い歴史があるのですね。

最初は貴族や僧侶しか口にできなかったそうですが、年月をかけて徐々に一般にも広まったと聞いております。『京華漬』の『京』は「京都」、『華』は「華の大江戸」を指し、“京都と江戸の融合”を表す名称となっております。

独自のカット法『大名切り』 包装にもこだわりが

『京華漬』はそのカット方法にもこだわりがあると伺いました。

弊社では、かなり厚く四角い立方体のような形に切り分ける『大名切り』という方法を使っております。贅沢感が得られるだけでなく、漬け込むときに周りからどんどん味噌がしみ込んで魚のうまみを中心に残せるという利点もございます。

表面では西京味噌、中央ではお魚の美味しさを存分に味わえるというわけですね。また、一切れ一切れ手作業でカットされているとか……?

はい。一切れ一切れ丁寧に人の手で味噌に漬け、十分に漬かったタイミングでガーゼに丁寧にくるんで出荷しております。

一つの商品を作るのにどのくらいの期間がかかるのでしょうか?

魚種によっても異なるのですが、およそ3~4日漬け込んでおります。大名切りとは別にスライスカットの商品もご提供しているのですが、そちらの漬け込み時間はもう少し短くなりますね。

商品のバラエティについても詳しくお伺いできますか?

大名切りの商品は3種類ございます。それぞれ『孟宗竹割蓋』『すだれ巻き』『竹皮包み』と名付けられており、その違いは一切れ一切れの大きさや魚の部位ですね。最高級の『孟宗竹割蓋』では魚の胸部を使っており、お求めやすいものになるほど尾ひれに近づいているイメージを持っていただけるとわかりやすいかもしれません。

胸部を用いた商品にはどのような特徴があるのでしょうか?

腹部の身が多く含まれるため、脂分も多くなっております。なお、『孟宗竹割蓋』は”竹筒”にくるんだものを風呂敷で包んで贈答用として、『すだれ巻き』はその名の通り”すだれ”、『竹皮包み』は”竹皮”に包んで、とそれぞれに包装も異なっております。

竹皮でも十分な質感が感じられると思うのですが、やはり「孟宗竹(もうそうちく)」の割蓋が使われた『孟宗竹割蓋』は、贈られた方もひとしおのうれしさを感じられるでしょうね。

独自の商品が生み出されるのは日々の試行錯誤から

『蔦の家』では、西京漬のほかにはどんな商品ラインナップがございますか?

一般的なスライス切りの商品にも目鯛・銀鱈・鰆・サーモン・メロなどさまざまな種類がございます。

たらこの西京漬などは珍しい商品ですね。

そうですね。こちらは最も漬け込み時間の長い商品です。ほかにも、『京華鮨』という商品もございまして、西京漬にした鯖を焼いてお寿司にしてお出ししております。黒米と白米をブレンドした“赤い”酢飯を使用しておりまして、健康にも配慮した商品です。

こうした独自の商品はどのように考案されているのですか?

『京華鮨』は、日々いろいろなものを漬けて試していくなかで、「せっかくおいしい西京漬けの鯖があるからちょっとお寿司にしてみよう」という発想で生まれました。もう10年以上前になるのですが、試作を繰り返す中で生まれた商品ですね。

バッテラなどのポピュラーなお寿司とはまた違ったオリジナリティがある商品ですよね。

西京漬を独自に進化させた『京華漬』など、『蔦の家』は常にオリジナリティを追求しながら、美味しい商品を生み出してきました。一つひとつの商品ができあがるまでには想像以上の時間がかかり、それでも手作りにこだわる。そこにあるのは、「お客様に本当に美味しいものを提供したい」という真っ直ぐで真摯な思いです。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ

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