Tokyo

12/22 (日)

大切なのは地道なネットワーク作り。「有無相通」の精神でビジネスを広げていく「中沢乳業株式会社」

日本中のスーパーで商品が扱われている乳製品の大手企業「中沢乳業株式会社」。そのスタートは、明治元年、新橋に牛4頭の小さな牧場を作り、牛乳の製造販売を始めたことでした。食の西洋化とともに大きく成長していった中沢乳業株式会社は、現在に至るまでどのような道のりを歩んできたのでしょうか。代表取締役社長の中澤謙次さんにお話を伺いました。

前編より続き〜

林:商品を作る上での課題にはどんなことがありますか?

中澤さん:工場のラインで作ると、小さい窯で作るようにはなかなかうまくいきません。そこで私達だけで作るのはやめようと結論付けました。開発は弊社でやり、それを作れるところを探していく。これを「有無通」と言っています。

 

あるものないものをはっきり決めて、相通ずる会社とビジネスを広げていこうという意味です。弊社にあるものの筆頭が、開発能力、技術、販売能力です。なくてもいいものは設備かもしれません。日本全国に動いてない設備もあったりするので、それをうまく使わせてもらえないかと考えました。

林:有無通」素晴らしいお言葉ですね。具体的に「有無通」で作り出されたのは、カスタードクリームですか?

中澤さん:そうですね。

林:そこに市場があるというのは販売接点を持っているから気づけるということなのかなと思います。カスタードクリーム以外には、どういうイノベーションあったのでしょうか。

中澤さん:生クリームを作るときに、乳化して安定させていくのにはすごい技術がいるんです。この乳化の技術をどうにか活用できないか、社内で検討しているところです。例えばシュレッドチーズの工場でチーズソースを開発してみようとか、乳化の技術を使って今あるものをイノベーションしていきたいですね。

林:面白いですね。乳製品を作るのではなく、乳化させるというところが企業の要素技術というか、抽出して強みになる部分ということですね。それは本当難しいところですよね。

中澤さん:例えば水と油をくっつけるだけなら誰でもできます。それをホイップして、ツノが立つように維持させたり、分離しないようにしたり、ここの技術は意外と見えないのです。

林:例えば鰻の老舗さんだと、どのお店にも秘伝のタレがあって、その製法はご当主だけが知っているということがよくありますが、中沢乳業さんの技術は社内の技術者の間で受け継がれているのでしょうか。

 

中澤さん:そうですね。それは研究スタッフがきちんと引き継いでやってくれています。ですから我々にとって彼らは財産であり、これからの未来を作っていく非常に大事な存在だと思っています。

林:武田信玄も「人は城、人は石垣」と言っていますよね。中沢乳業さんは新しい開発やイノベーションを促すために何かしていることはありますか?

中澤さん:あまり意識はしていませんが、いろいろな提案が開発部から出てきます。今は乳化技術の活用法を模索することと中間加工製品の開発。この2つがメインテーマになっていますね。

林:やはりそこは中澤社長がリーダーとして、方向を示しているのですね。販売担当からこういうがニーズありそうだと情報が上がってくるのでしょうか?

お客様との繋がりを大事に、ニーズを嗅ぎ取る

中澤さん:そうですね。営業担当から上がってくる報告書、自分で新聞やメディアから仕入れた情報、お客様と直接会話をして得る情報、この3つの整合性を取って判断しています。

 

営業担当の話は、ときに聞きやすいことばかりになってしまうかもしれないので、私自身でも市場の確認をしていくために、お客様との繋がりはしっかり持っています。出過ぎず、現場を立てながらも情報は確実に得ています。

林:それはすごいバランス感覚ですよね。営業さんからの話だけでなく、新聞も大事なソースにされているのですね。

中澤さん:今の経済状況を含めて風の流れはすごく変わるじゃないですか。物価状況から、企業物価のギャップもありますし、お客様の肌感覚を私達も感じていきたいですね。

林:中沢乳業さんのお客様は、レストランやお菓子の製造の会社だけでなく、直接商品を購入する消費者さんもいらっしゃいますし、いろんな組み合わせで潮目が変わって、生産コントロールにも関わってきますよね。

中澤さん:生産コントロールについては意外と昔ながらのやり方ですね。販売数量には年間を通して波があるので、過去のデータに伴ってやっています。

林さん:クリスマス前の出荷量などある程度見通しが立っているということですね。初期の頃から見て、販売の仕方などで変わってきている部分はありますか?

中澤さん:当社の製品を使っていただく職人さんが全国に広がって、その人間関係でビジネスをやっています。私達は顔を合わせてきっちりビジネスすることを大切にしているので、その根幹については昔から変わっていないかも知れません。

 

例えば、新しいお店ができたら末長くお取り引きいただけるように必ず開拓していきます。それが10年後のシェアにも影響してきます。新しいお店ができる情報というのはお客様に訪問して話を聞かない限り得ることはできません。そこはやはり企業を存続していく上で一番大事なところだと思います。

林:業界内の話として、「あそこのお菓子屋さんのパティシエが独立してお店開くらしいよ」みたいなレベルの情報を取っていかないと商談に入っていけないと思いますが、そういうご努力をされているんですね。

中澤さん:まさにそうですね。新規開店のお店を紹介してもらうというのはビジネスの始まりですので、日頃からシェフとのコミュニケーションをしっかりとることが大事です。

林:そういった地道なネットワーク作りをされているからこそ、新たな商品展開の話も来るのかなと思います。あとは海外に向けて強化していくことなどはありますか?

 

中澤さん:海外から日本に遊びに来た方々は、みなさん口々に日本のケーキは美味しかったと言ってくださいます。キーになるのは生クリームだと思うので、現地でも美味しいケーキを食べていただけるような活動をこれからしていきたいと思います

林:これから海外にも展開されていくということで、中沢乳業さんの展開にぜひご注目いただければと思います。最後にまとめをお願いします。

中澤さん:私達がお客様に必要としていただける価値、社会的に存在する意義は何なのか。そこをしっかりと見直していきたいです。長くやってきたから今後も長くやれるわけではありません。過去の延長線上に未来はないので、pastじゃなくてFutureの話をして、もっともっと革新的なことをやっていきたいですね。ぜひ消費者の皆様からもいろいろと教えていただきたいです。

お客様との繋がりを大切にすることで、いま求められているものは何なのか分析する。中沢乳業株式会社が乳製品市場で愛されつづけている理由は、そこにあるのかもしれません。今後は海外も視野に入れているという同社の動向からは、ますます目が離せないでしょう。

※この対談を動画で見たい方はコチラ

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