日本橋 いなり寿司の老舗「人形町志乃多寿司總本店」。時代に合わせて変えるもの、そして絶対に変えないもの いなり寿司海苔巻き さっと片手でつまんで食べられる“粋“な食べ物いなり寿司。明治10年創業のいなり寿司の名店「人形町志乃多寿司總本店」は、その味を長年にわたって守り続けています。世代を超えて愛される味を守り続ける一方で、運営方針は時代に合わせて柔軟に変化しているのだそう。五代目の吉益敬容さんにお店の歴史とこれからのことについてお話を伺いました。〜前編より続き〜広げすぎた事業を見直し、基本に立ち返ることにした悩んだ末に、拡大しすぎた事業を畳むというご英断をされた吉益さん。そういったご苦労をしていよいよ新体制になったところで、どういうことをやっていかれたんでしょうか。基本をしっかりやっていくということで、初代が始めたデリバリーを強化していきました。電話やFAXだけでなく、ネット上で注文できるように自社のホームページを作ったり、出前館に登録してみたりしたんです。一時は江戸前寿司や日本料理の提供もしていたというお話でしたが、そういった飲食店形式のお店はやめて、店舗販売とデリバリーという元々の形に戻していったのですね。商品のラインナップに何か変化はあったんでしょうか。「地方にもお寿司を送ってほしい」という問い合わせが頻繁にあったので、15年前くらいから冷凍通販を考えるようになりました。ただ、僕は常温解凍にこだわりがあって、レンジを使わずにいなり寿司を美味しく解凍するのが、当時の技術では難しかったんですね。そこでまずは、いなり寿司の味付きのお揚げとか、かんぴょう巻きのかんぴょうとか、真空パックで扱える商品の通販を始めました。地方のファンの声に応えるべく通販にも力を入れていったんですね。最近は冷凍技術も進化してきましたが、何か進展はありましたか?冷凍技術は特にここ数年ですごく進化しましたね。解凍する際に熱を加えるとどうしても味の変化が出てくるので、どこで妥協するか悩ましかったんですが、レンジを使わず湯煎で解凍するならできるということで、2022年の2月から冷凍いなり寿司とばらちらし寿司の通販をスタートさせました。湯煎して食べられる商品も出てきているということで、あとは常温解凍ができるようになれば希望通り、ですね。そうですね。でも、熱を入れずに米を戻すというのがどうしても難しいんですよ。これは僕の分野ではないので、もうちょっと技術が進んでくれると嬉しいです。味わいの部分などはコントロールをしていく上ですごくご苦労あると思うのですが、それは吉益さんが決めているのですか?いなり寿司とかんぴょう巻きの味わいについては、僕もいじらないというスタンスです。それ以外は自由にやっています。老舗として守っていく部分と変えていく部分があると思うのですが、「味を変えないのかレシピを変えないのか」みたいな話がありますよね。例えば、醤油は塩分濃度や大豆の質が昔と今では全く変わっているので、昔通りのレシピで分量を守っても同じ味にはならないという。感覚的に覚えている味をどう再現するかというところで、老舗の皆さん努力されているようですね。そういう味のチェックは定期的にされているのですか?はい。それで言うと、志乃多の味を変えないために、レシピを変えています。もちろん僕が実際に食べて覚えているのは三代目の味からですが。やっぱり先代の味を知っている職人さんも一緒になって、「これは合ってるね」「これはどうかな?」とひとつずつ確認されていくんですね。幸いなことに僕が家業に戻ってきた当時は、60代、70代のベテラン職人さんもまだ結構いらっしゃったので、そういう話が聞けたのは良かったなと思います。変わらない味を守りながらも、従業員のアイデアを積極的に採用素晴らしいです。味覚ってすごく難しい部分ですが、ベテラン職人さんのご協力もあって事業の継承があるのですね。いなり寿司とかんぴょう巻き以外は、従業員の皆さんに自由に提案をしてもらう機会を作っているのですか?季節商品の社内公募をして、いろんな人に案を出してもらっています。採用されたら金一封! みたいな感じで企画すると、みんな真剣に考えてくれて楽しいですよね。これはうちの妻が考案したんです。奥様がそういった事業推進のアイデアを出されるのですね。はい。SNSも頻繁に発信していますね。それもうちの妻が始めたことで、今では若手社員みんなでやっているようです。吉益さんは奥様のことをすごく大切にされていて、今日も「自分じゃなくて妻が来れば良かったのに」なんて話をされていましたね(笑)。奥様がお店に入って変わった部分というのはあるんですか?そうですね。トップダウンだったものが、会議を通してみんなの意見を吸い上げ、物事を決めるというふうに変わってきています。江戸の老舗は昔からご当主がトップダウンでやっているのが普通だったと思うのですが、今の志乃多寿司はみんなの意見を広く聞くスタイルになっているんですね。私はもう報告を聞くだけですね。最終的なジャッジはもちろん私が下しますが、基本的には「これやります」「はいどうぞ」っていう(笑)。もう年寄りがあんまり口出ししても碌なことないのでね。だけどいなり寿司とかんぴょう巻きに関しては絶対に変えませんと。それは大事なことですよね。絶対に変えないと決めたもの以外は任せること。そのさじ加減って本当に難しいと思うんですけど、いい商品を開発してくれる社員さんを評価したり、売上の部分をしっかり見て判断していく感じですね。じゃあ以前とは結構スタイルが変わってきたんですね。180度変わったと思います。社内に活気が出たような気がします。やっぱり従業員の皆さんがお店のことを自分事として考えてくださっているからこそですよね。最後に、吉益さんがこれからやろうとしていることがあれば教えてください。冷凍寿司が僕の趣味みたいになっているので、もうちょっとラインナップを増やしていきたいです。今はまだ海苔を使った商品ができていないので、今後は海苔巻きや太巻きなどのバリエーションも考えていきたい。米を使わない惣菜的な商品も通販できたらいいですね。今回はいなり寿司の名店「人形町志乃多寿司總本店」の戦略についてお話を伺いました。お近くの方はデリバリーもできますので、志乃多寿司の様々な商品をぜひ一度お試しください。※この対談を動画で見たい方はコチラ あなたはどちら...? 行きたい999 興味あり999 関連する老舗Related Spot 食べる 麻布・赤坂・六本木 おつな寿司 いなり寿司寿司 買う 日本橋 人形町志乃多寿司總本店 いなり寿司海苔巻き 一覧ページへ 同じエリアの老舗Same Spot 体験する 中央区 日本橋 伝統文化と出かけよう!文化の交差点「老舗フェスティバル2024」 agataJapanイベント伝統芸能史跡、文化財散歩日本橋日本酒老舗フェスティバル 買う 日本橋 三原堂本店 どらやき和菓子最中 買う 日本橋 龍工房 伝統工芸帯締め組紐 買う 日本橋 経新堂 稲崎 表具店 屏風掛け軸表具 食べる 丸の内・八重洲 日本橋 伊勢廣 京橋本店 焼鳥 エリア一覧ページへ 老舗を探すSearch 検索する その他 浅草 向島・本所 日本橋 銀座 丸の内・八重洲 神田 上野・谷中・日暮里 飯田橋・神楽坂 お茶の水・湯島・後楽園 新橋・品川・お台場 麻布・赤坂・六本木 両国・亀戸 門前仲町・清澄白河 江戸川・江東 亀有・柴又 芝 渋谷・代官山 新宿・中野 目黒・世田谷 池袋・赤羽 大森・蒲田 吉祥寺・杉並 八王子・町田・府中 東村山・青梅・奥多摩 伊豆諸島・小笠原諸島 検索条件をクリア 検索する 食べる 買う 体験する 泊まる 検索条件をクリア 検索する 100年以上続く老舗のお歳暮・お中元・手土産をお取り寄せできる通販サイト 通販サイトへ 日本のよいものを世界へ Spotify YouTube Twitter Facebook Instagram TikTok キーワードから探すTag 寺社、仏閣 史跡、文化財 日本酒 着物 国府エリア 和服 散歩 蕎麦 伝統工芸 桜 更科そば 重要文化財 和菓子 春 お花見 日本刀 フォトスポット お祭り 浅草の老舗 日本美術 端午の節句 江戸 紅葉 伝統芸能 こどもの日 ひな祭り あんこ 日本庭園 佃煮 浴衣 コンテンツContents 江戸まちごよみ 江戸まちめぐり 私が選んだ逸品 エリア 食べる 買う 体験する 泊まる イベント情報 ライブカメラ 老舗ニュース まちめぐりガイド まちごよみ用語辞典 TOP ホーム 江戸まちごよみ 江戸まちめぐり 老舗ご当主・識者と歩く 東京文学散歩 古地図で江戸散歩 お祭りレポート 老舗レポート 私が選んだ逸品 食べる 買う 体験する 泊まる イベント 老舗ニュース まちめぐりガイド まちごよみ用語辞典 コラム 大人のマナー講座 季節の暮らし方 老舗ご当主インタビュー 老舗総合研究所 ライブカメラ サイトからのお知らせ 江戸まちツアー 江戸の老舗オンラインサロン エリア 浅草 向島・本所 日本橋 銀座 丸の内・八重洲 神田 上野・谷中・日暮里 飯田橋・神楽坂 お茶の水・湯島・後楽園 新橋・品川・お台場 麻布・赤坂・六本木 両国・亀戸 門前仲町・清澄白河 江戸川・江東 亀有・柴又 芝 渋谷・代官山 新宿・中野 目黒・世田谷 池袋・赤羽 大森・蒲田 吉祥寺・杉並 八王子・町田・府中 東村山・青梅・奥多摩 伊豆諸島・小笠原諸島 お問い合わせ よくある質問 このサイトについて サイトポリシー プライバシーポリシー Social フリーワードで検索Search キーワードから探すTag 寺社、仏閣 史跡、文化財 日本酒 着物 国府エリア 和服 散歩 蕎麦 伝統工芸 桜 更科そば 重要文化財 和菓子 春 お花見 日本刀 フォトスポット お祭り 浅草の老舗 日本美術 端午の節句 江戸 紅葉 伝統芸能 こどもの日 ひな祭り あんこ 日本庭園 佃煮 浴衣 MENU
悩んだ末に、拡大しすぎた事業を畳むというご英断をされた吉益さん。そういったご苦労をしていよいよ新体制になったところで、どういうことをやっていかれたんでしょうか。
基本をしっかりやっていくということで、初代が始めたデリバリーを強化していきました。電話やFAXだけでなく、ネット上で注文できるように自社のホームページを作ったり、出前館に登録してみたりしたんです。
一時は江戸前寿司や日本料理の提供もしていたというお話でしたが、そういった飲食店形式のお店はやめて、店舗販売とデリバリーという元々の形に戻していったのですね。商品のラインナップに何か変化はあったんでしょうか。
「地方にもお寿司を送ってほしい」という問い合わせが頻繁にあったので、15年前くらいから冷凍通販を考えるようになりました。ただ、僕は常温解凍にこだわりがあって、レンジを使わずにいなり寿司を美味しく解凍するのが、当時の技術では難しかったんですね。そこでまずは、いなり寿司の味付きのお揚げとか、かんぴょう巻きのかんぴょうとか、真空パックで扱える商品の通販を始めました。
地方のファンの声に応えるべく通販にも力を入れていったんですね。最近は冷凍技術も進化してきましたが、何か進展はありましたか?
冷凍技術は特にここ数年ですごく進化しましたね。解凍する際に熱を加えるとどうしても味の変化が出てくるので、どこで妥協するか悩ましかったんですが、レンジを使わず湯煎で解凍するならできるということで、2022年の2月から冷凍いなり寿司とばらちらし寿司の通販をスタートさせました。
湯煎して食べられる商品も出てきているということで、あとは常温解凍ができるようになれば希望通り、ですね。
そうですね。でも、熱を入れずに米を戻すというのがどうしても難しいんですよ。これは僕の分野ではないので、もうちょっと技術が進んでくれると嬉しいです。
味わいの部分などはコントロールをしていく上ですごくご苦労あると思うのですが、それは吉益さんが決めているのですか?
いなり寿司とかんぴょう巻きの味わいについては、僕もいじらないというスタンスです。それ以外は自由にやっています。
老舗として守っていく部分と変えていく部分があると思うのですが、「味を変えないのかレシピを変えないのか」みたいな話がありますよね。例えば、醤油は塩分濃度や大豆の質が昔と今では全く変わっているので、昔通りのレシピで分量を守っても同じ味にはならないという。感覚的に覚えている味をどう再現するかというところで、老舗の皆さん努力されているようですね。そういう味のチェックは定期的にされているのですか?
はい。それで言うと、志乃多の味を変えないために、レシピを変えています。もちろん僕が実際に食べて覚えているのは三代目の味からですが。
やっぱり先代の味を知っている職人さんも一緒になって、「これは合ってるね」「これはどうかな?」とひとつずつ確認されていくんですね。
幸いなことに僕が家業に戻ってきた当時は、60代、70代のベテラン職人さんもまだ結構いらっしゃったので、そういう話が聞けたのは良かったなと思います。
変わらない味を守りながらも、従業員のアイデアを積極的に採用
素晴らしいです。味覚ってすごく難しい部分ですが、ベテラン職人さんのご協力もあって事業の継承があるのですね。いなり寿司とかんぴょう巻き以外は、従業員の皆さんに自由に提案をしてもらう機会を作っているのですか?
季節商品の社内公募をして、いろんな人に案を出してもらっています。採用されたら金一封! みたいな感じで企画すると、みんな真剣に考えてくれて楽しいですよね。これはうちの妻が考案したんです。
奥様がそういった事業推進のアイデアを出されるのですね。
はい。SNSも頻繁に発信していますね。それもうちの妻が始めたことで、今では若手社員みんなでやっているようです。
吉益さんは奥様のことをすごく大切にされていて、今日も「自分じゃなくて妻が来れば良かったのに」なんて話をされていましたね(笑)。奥様がお店に入って変わった部分というのはあるんですか?
そうですね。トップダウンだったものが、会議を通してみんなの意見を吸い上げ、物事を決めるというふうに変わってきています。
江戸の老舗は昔からご当主がトップダウンでやっているのが普通だったと思うのですが、今の志乃多寿司はみんなの意見を広く聞くスタイルになっているんですね。
私はもう報告を聞くだけですね。最終的なジャッジはもちろん私が下しますが、基本的には「これやります」「はいどうぞ」っていう(笑)。もう年寄りがあんまり口出ししても碌なことないのでね。だけどいなり寿司とかんぴょう巻きに関しては絶対に変えませんと。
それは大事なことですよね。絶対に変えないと決めたもの以外は任せること。そのさじ加減って本当に難しいと思うんですけど、いい商品を開発してくれる社員さんを評価したり、売上の部分をしっかり見て判断していく感じですね。じゃあ以前とは結構スタイルが変わってきたんですね。
180度変わったと思います。社内に活気が出たような気がします。
やっぱり従業員の皆さんがお店のことを自分事として考えてくださっているからこそですよね。最後に、吉益さんがこれからやろうとしていることがあれば教えてください。
冷凍寿司が僕の趣味みたいになっているので、もうちょっとラインナップを増やしていきたいです。今はまだ海苔を使った商品ができていないので、今後は海苔巻きや太巻きなどのバリエーションも考えていきたい。米を使わない惣菜的な商品も通販できたらいいですね。
今回はいなり寿司の名店「人形町志乃多寿司總本店」の戦略についてお話を伺いました。お近くの方はデリバリーもできますので、志乃多寿司の様々な商品をぜひ一度お試しください。
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