小豆の風味が豊かに香る、手間暇かけた自家製あんこ
2022年9月に喫茶も併設した新店舗が銀座7丁目にオープンしました。大通りから一歩入った静かな場所にあるビルの1F。お菓子を買うだけでなく、ここでしかいただけない限定のメニューとお抹茶で、ほっと一息できるお店です。
萬年堂本店のお菓子の中でも一際目を引くのが鮮やかな化粧箱に詰められたお赤飯のような見た目のお菓子「御目出糖」。元禄より家伝の高麗餅を明治中頃に御祝儀菓子としてアレンジしたもので、現在に至るまで愛され続けています。
喫茶では蒸籠で蒸した温かい「御目出糖」をいただけます。また、煉りたての「あん蕨餅」や季節の生菓子。これらの3つのお菓子から1つを選び、それにお抹茶とほうじ茶、干菓子がついたセットメニューとなっています(1,650円〜1,980円)。
400年以上の歴史がある萬年堂の暖簾を守っているのが、13代目となる樋口喜之さん。浅草橋にある工場で、もう1人の職人とパート従業員、合わせて5名ほどの少人数体制で全ての和菓子をつくっています。子どもの頃から、住まいの隣にあった工場にふらっと遊びに行き、職人達の手仕事を見ているのが好きだったと話してくださいました。そんな樋口さんが和菓子づくりの中で大事にしているのは「あんこ」だそうです。
「萬年堂の和菓子の特徴は、手間と時間をじっくりかけて自社で製造しているあんこにあります。萬年堂のあんこは、小豆の皮の渋味を含んだ煮汁を捨てずにじっくり煮込んだ『渋切らず餡』。小豆そのものの味と香りが濃厚に残っています」(樋口さん)
確かに、萬年堂のあんこを使ったお菓子はどれも小豆の味わいと風味が強く感じられる仕上がり。どこか懐かしいような素朴な味わいの渋切らず餡は、「御目出糖」にも使われています。
「コロナ禍で一時は売り上げの激減を経験しましたが、最近では以前よりもご自身やご家族が自宅で楽しむために気軽に和菓子を購入してくださるお客様がとても増えたと感じています。今後もさまざまな困難はあるかと思いますが、お客様が喜んでくださるお菓子をつくり続けていきたいです」