170年の歴史を持つ老舗、山本海苔店。「味付け海苔」発祥のお店が語る、味のこだわり

日本橋海苔

海苔ひとすじ170年以上の歴史を持つ山本海苔店。口どけが良く、「美味しい海苔」といえば右に出る者はいない存在です。そんな老舗の歴史を辿りながら、味のこだわりについて、代表取締役社長の山本貴大さんにお話をうかがいました。

「味付け海苔」は一体どのように生まれたのか

まずは自己紹介をお願いします。

山本海苔店の山本貴大と申します。2005年に大学を卒業し、まず銀行員になりまして、4年勤めました。その後、2008年に山本海苔店に入社しました。それからいろいろな苦労をいたしまして、昨年、社長になりました。

続いて、お店の紹介もお願いします。

山本海苔店は、初代・山本徳治郎が、今から約174年前の1849年、日本橋で創業いたしました。ペリーがやって来たのが1853年ですから、江戸の末期です。場所は日本橋川の北側、三越百貨店の向かいでした。

今、豊洲に魚河岸があると思うんですけども、その前は築地、さらにその前は日本橋にありました。東京湾でとれた貝や魚や海苔が陸揚げされ、そこから江戸城や江戸城下町に供給されていきました。ですから、今も昔も海産物を扱う海産物問屋が多いのがこの地域の特徴。ここで174年間、ずっと商売を続けてきております。

そして、創業時から使っているのが丸梅マーク。このマークを使っているのには二つ理由がありまして、一つは、梅が咲く季節にとれる海苔がすごく美味しいということを表すためです。もう一つ目は、海苔にとって重要な香りがすごくあることを示すため。これらの意味を込め、創業当時からずっとこのマークを使っております。

商品名の「梅の花」「紅梅」「旭の海」は、実は梅の種類の名前なんです。ただし、梅の味はしないので、そこだけ勘違いしないでいただければと思います。

山本海苔店さんのことを「丸梅さん」と呼ばれる方もいらっしゃいますね。

通の方はそう呼びます。百貨店に行って「丸梅さんどこですか?」と聞いていただけると、私どものお店にご案内いただけるはずです。「この人、通だな」と思われますよ。

二代目の時代には、二つ大きなことをやりました。一つ目は、味付け海苔の発明です。明治天皇が、山岡撤収という歴史上の人物に「今度京都に行くんだけども、なんか面白い江戸土産を作ってくれないか」と頼まれ、山岡撤収が二代目・山本徳治郎に依頼し、その結果、味付け海苔が生まれました。それを機に、味付けの元祖は山本海苔、となっています。

二つ目は、それまでは海苔は海苔としてしか販売していなかったものを、「これはお寿司用の海苔です」「これはお蕎麦用です」と、用途を8種類に仕分けしたことです。この仕分けが、今でも脈々と続いています。

山本海苔店は、味付け海苔を開発しているので、今でもいろいろな味付け海苔があります。そして、仕分けの技術を持っているので、本当に美味しいものばかりです。

三代目の時代には海苔のサイズを統一しました。当時、海苔にはさまざまなサイズがあったんです。それを統一したのが三代目の徳治郎で、当時の海苔業界においてはイノベーティブなことでした。

フォーマットを決めたということですね。

そうです。フォーマットを決めたことで、物流が整い、広がっていったんじゃないかと思っております。

秦の始皇帝みたいですね。

それは言いすぎかもしれませんが(笑)。そして四代目の時代。この頃は、戦争や関東大震災があった大変な時代でした。このとき、日本橋にあった魚河岸が築地に移りました。だから山本海苔店も、築地に初の支店を作りました。今では100店舗もありますが、当時はゼロだった支店を1にした。これは山本海苔店にとっては大きなことでした。

五代目になり、いま大変お世話になっている百貨店さんの事業に乗り出しました。百貨店は高級品を買うところですから、海苔にも進物としての価値がつきました。しかも軽い。これによって、山本海苔店は大きくなりました。日本中のいろいろなところにあるドライブスルー、これも実は、山本海苔店が最初です。

いち早く取り入れたということですね。

米の消費量に左右されない、新しいタイプの海苔製品

海苔はお蕎麦にかけるもの、おにぎりに巻くものであり、なかなか主食になりません。また、お米に合うものなので、お米の消費量が減ると、海苔の消費量も減ります。三、四十年前と比べて、一人あたりの米の消費量は120キロから60キロぐらいまで減っていると聞いています。そうすると海苔の消費量も半減します。

「これでは海苔の消費量は伸びない」という危機感を感じ、海苔だけで食べてもらえないかということも考えました。たとえば、コンビニにある干し梅や焼き梅の隣に置いてあったらいいなと思って作った、「海苔と梅のはさみ焼き」という商品です。

新しいニーズをさらに生み出された。

そうですね。山本海苔店は、イノベーティブやエポックメイキングなことをやることで、海苔業界を引っ張ってきたという立場です。これからもそうありたいと思っています。

ありがとうございます。徳治郎さんがイノベーティブなチャレンジをされてこられた結果が、今につながっているのだと思います。実際に、どのような商品に反映されているんでしょうか。

看板商品の「梅の花」ですが、とにかく美味しさにこだわり、美味しい海苔をこだわり抜いて作っています。進物用、要するにお中元やお歳暮で使われるギフト用の良い海苔です。でも、それより上があります。それが「旭の海」です。

海苔にはいろいろな価値がありますが、山本海苔は「口どけ」をすごく大事にしています。さきほども言いましたが、海苔にはおにぎりを巻く、細巻きを作るなど、いろいろな機能が求められます。それも悪くはないのですが、山本海苔は、そういったことはちょっと置いておいて、とにかく「味が美味しい海苔」を良い海苔としています。

しかし、作り方がちょっと難しいんです。海苔は冬の間に育つんですが、夏の間は貝の中に海苔の胞子が入っています。冬になるとそれが上がってきて、網にくっ付いてピューッと伸びていきます。それを早く切れば切るほど、味も香りも口どけも良くなります。

漁師さんが、本当は20cm伸ばしたいところを、それでは美味しくならないから10dmで切ってくれ、とお願いするためには、やはり1cm当たり2倍以上の価格で買うということを伝えなければいけません。

そのほうが効率的ですから。でも山本海苔は、高く買うからとにかく短く切って、とお願いしているんです。

漁師さんは海苔を売る立場ですから、本来なら我々の立場が強いはずですが、「お願いだから短く言ってくださいよ~」とお願いしています。漁師さんからは「え~やだよ。短く切ったらボロが出るんだもん」なんて言われたり。そんな話をいつもしているところが面白い関係です。

生産者のみなさんの協力があって、良いものができますものね。

代が変わるごとに革新的なチャレンジをしてきた山本海苔店。後編では、「山本海苔店」というブランドを守る上で大切にしていることに迫っていきます。

後編へ続く

※この対談を動画で見たい方はコチラ


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