甘くて香ばしい日本伝統のお菓子、雷おこし。創業200年以上の老舗、『常盤堂雷おこし本舗』は浅草雷門の真横に本店を構え、浅草土産の代表としてインバウンドも活況なその場所に元気と楽しみを与え続けてきました。そんな同社は、どんなイノベーションに取り組み、何を大事にしてお菓子作りに向き合っているのでしょうか。
具体的な商品へのこだわりや現在取り組んでいる施策、雷門との歴史的秘話など、貴重なお話を、『常盤堂雷おこし本舗』戦後三代目ご当主の穂刈久米一さんより伺いました。
林:早速お店の紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。
穂刈さん:私ども、『常盤堂雷おこし本舗』は、雷門の真横に店舗を構える和菓子製造販売の会社です。
林:雷門の向かって左側にある有名なお店ですよね。
穂刈さん:創業時より“家も起こして名も起こせる”縁起菓子、『雷おこし』を取り扱ってまいりました。
穂刈さんの自己紹介もお願いできますか?
穂刈さん:現在62歳、36歳から『常盤堂雷おこし本舗』の当主をやっております。普通老舗の若旦那は百貨店や銀行へ修行に行くのですが、私の場合は大学卒業後そのまま弊社の工場で勤めました。父曰く、「“辛くなったら家に帰ってくる”ような社員を抱える社長はかわいそうだからやむなく俺が雇ってやる」とのことでして(笑)。
そうなんですね(笑)。
だから私は浅草の外を知らないんですよ。そのため、市場やマーケットに疎いのが私の弱点ですね。ただ、36歳で父が他界したので、結果として早く仕事を知ることができたのはよかったかもしれません。
やはり、若くして老舗を継ぐにあたって、社員や浅草の方など周りの方に支えられた面もあったのでしょうか?
そうですね。私が会社を継いだのはバブルがはじけた直後、平成8年のことでした。なので、私は“不運の経営者”なんですよ。
コロナなどその後の苦境もありましたが、それらは穂刈さんだからこそ乗り越えられたのではないでしょうか。こちらの写真では、サーフィンで波も乗り越えられていますね?
4年ほど前にハワイで大会に出た時の写真です。恰好よく見えますが、このときは一回戦で負けました(笑)。
非常にうまく乗りこなしてられるように見えますが、そうなんですね(笑)。普段日本ではどこでサーフィンをされているんですか?
湘南にある「辻堂」というところのサーフィンチームに入っています。今日来ているアロハシャツは、日本サーフィンの第一人者である小室正則さんのチームのものなんですよ。
普段から精力的にサーフィンなど趣味にも取り組まれているんですね。
穂刈さん:土日の朝イチでサーフィンをして、昼頃にお店に戻ってくる生活をしております。
サーフィンは早朝から楽しんで、午前9時ごろにはヘトヘト……といった時間の使い方をするスポーツですもんね。
時代に合わせて味も変えていく「伝統は改革である」の精神
『常盤堂雷おこし本舗』に家訓はございますか?
家訓というかはわからないのですが、「伝統は改革である」という考えをモットーにしています。なので、先々代、先代、私とで雷おこしの中身は全く違います。1795年創業の弊社ですが、当主が穂刈となったのは戦後です。そして、200年前の人と今の人が同じものを好んで食べてはいません。ならば、時代に合わせて味も変えていかなければならないと思うんです。
たとえば、どのような変化がございますか?
穂刈さん:先代の時代はお菓子に色をつける流行に合わせて、着色料を使ってカラフルな雷おこしを作っていました。先々代のときは、甘いものが貴重ですから、“甘さ”を長く楽しめることが求められました。そのため、たくさん砂糖を使ってこってりとした甘さにしていたそうです。そして私の時代には、着色料を抑えるとともに、米の膨化力を高め、水あめを極限まで減らすことで製品の触感を柔らかくすることに心を砕きました。
林:なるほど。
私のせがれは雷太といいまして、今専務なのですが、彼の時代にはまた違った”常盤堂の雷おこし”が生まれるのではないかと思っています。
雷門の風神雷神像と『常盤堂雷おこし本舗』の歴史的秘話
林:本当に改革が繰り返されているんですね。味以外に変わった部分はありますか?
穂刈さん:包材も私の時代になって変わりました。弊社の紙袋には、トレードマークである風神雷神と雷門が描かれていますが、実は今の雷門に設置されている風神雷神像の胴体は、先々代が寄進したものなんです。今の雷門を寄進された方といえば松下幸之助さんですが、うちともそんな縁があったんですね。そこで風神雷神を紙袋に描くことにいたしました。
すごいですね。反対に伝統で“変えない”部分もございますか?
穂刈さん:商売熱心にやっていくという精神ですね。それ以外の形に見える部分はいろいろと変えております。
林:そうした改革について、後半でも伺っていければと思います。
時代によって、人々の“好み”は変化していく。それを敏感に嗅ぎ取り、時代のニーズに応える雷おこしを作り続けてきた『常盤堂雷おこし本舗』。その細やかな気配りが、大勢のファンの心を掴んで離さないのでしょう。
後編へ続く
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