【第1回】日本人だからこそわかる、パジャマがわりの浴衣と花火大会に着ていく浴衣の違い

コラム:女将と呼ばないで!和装浴衣着物

こんにちは。

虎ノ門にある225年続く呉服屋「丁子屋」の六代目小林絵里です。
今回agataJapan tokyoさんとのご縁で、全20回程度のコラムを書くことになりました。7年前、2016年に全くの異業種から老舗呉服屋を継ぐことになった私自身が感じた「キモノ」にまつわるABCや不思議ポイント、独自目線の見解を、エピソードを加えて分かりやすくお伝えしていけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

現代の日本人は外国人化してしまったのか?

私たちキモノ業界の人間にとっては常識でも、現代を生きる皆さんにとっては知ってるようで知らないことも多い、千年以上も前からその形状を変えることなく存在している衣装、「キモノ」。たまに年配の方で「今の日本人は外国人・宇宙人化してしまった」、と嘆いていらっしゃる方がいますが、それくらい、キモノは日常から遠い存在である方も多いでしょう。
 

おそらくこのコラムを読んでくださっている皆さんにとってイチバン馴染みがあるのは「キモノではなくユカタ!」ではないでしょうか? 私がこのコラムを書いている2023年5月9日現在はコロナも落ち着き、この夏はやっと各地の花火大会が開催されるようです。
夏の風物詩である花火大会、実は日本で最も有名な花火大会と言っても過言ではない「隅田川花火大会」は、1733年に江戸幕府八代将軍徳川吉宗が、江戸で大流行した(大飢饉と)疫病コレラによる死者の魂の鎮魂を目的に開催されたものでした。

浴衣の原型は蒸し風呂に入る際に着る「湯帷子」

今年こそ浴衣を着て花火大会へ行くぞ!と楽しみにされている方も多いと思いますが、そもそも、花火大会には必須アイテムの浴衣の起源ってご存じですか?
浴衣の原型は「湯帷子(ゆかたびら)」という室町時代に主流だった蒸し風呂に入る際の麻の着物を指しました。帷子とは、片平(かたひら)つまり裏地のない着物です。江戸中期には裏地のない着物のことを単(ひとえ)と呼び、木綿の浴衣が多くなってきたので、麻をわざわざ帷子と呼ぶことになりました。そのことから、現代では木綿の浴衣が主流ですが「湯帷子(ゆかたびら)」=「ユカタ」と、その呼び名に残っているというわけです。
もともとはお風呂上りに着用するものだった浴衣。ちなみに丁子屋の大女将は今年で75歳ですが、いまだに夏でも店で浴衣はあまり着ません。理由は「外では着物、浴衣はお風呂上り」の感覚が消えないからだそう。現代における旅館などのパジャマ的ポジションです。

ホテルにパジャマ代わりにおいてある浴衣で出かける外国人

丁子屋の近隣にはホテルがたくさんありますので、よく外国の方がいらっしゃいます。
彼らはホテルにパジャマ代わりにおいてある白地に藍染めの浴衣で、外に出てウロウロされていることも!!日本人が花火大会の時に着ている浴衣とホテルにパジャマ代わりに置いてある浴衣、どちらも浴衣。
宇宙人、なんて上の人たちから思われてしまう事も多いのかも知れませんが、わたしはパジャマの浴衣とそうでない浴衣、その違いが感覚として分かるのは、やっぱり「日本人」だからなんだと、思うんですよね(笑)。DNAというか…。だから、「着物のことはわからない、難しい」とおっしゃらず、まずは花火大会の浴衣からでも、日常の延長としてキモノを楽しんでいただきたいと思っています。そのため、このコラムでは、キモノの楽しさも難しさも、包み隠すことなくお伝えし、皆さんがもう少しキモノを身近に感じていただけたらと考えています。
200年以上前の江戸の人々も、現代のわたしたちと同じように、お風呂上りに浴衣を着て、夜空に打ちあがる花火を見上げたのだと思うと、コロナが落ち着いて、また夏にワイワイとたくさんの人に囲まれた時間を過ごせる世の中に戻ったこと…こみ上げるものがありますね。
2023年5月9日 丁子屋 六代目 小林絵里

小林絵里さん

丁子屋 六代目当主

この記事を書いたのは…

虎ノ門ヒルズビジネスタワー内1階店舗に突如あらわれる寛政十年創業の老舗呉服店「丁子屋」の六代目。2016年、オリックスグループなど全くの異業種から夫の稼業である呉服屋を継ぐことに。着付け師・キモノパーソナルカラーアナリスト。常識や固定概念に囚われない「次世代へ続く着物」を伝える。2020年~芝の老舗の会「百年会」常任理事。
趣味は「誰かを着付けること・コーディネートすること」とソロキャンプ。丁子屋ホームページ丁子屋インスタグラム

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