東京・浅草に、明治13年(1880年)から続くすき焼きの店「ちんや」があります。屋号の由来は、江戸時代に狆(ちん)などの愛玩動物を大名や豪商に納め、獣医も兼ねていたことから「狆屋」と呼ばれたこと。料理屋として開業したのは明治13年、すき焼き専門店に転じたのは明治36年(1903年)のことでした。
YouTubeチャンネル「日本の老舗」には、その6代目ご当主・住吉史彦さんが51分にわたって自店の歴史と肉への考え方を語った回が残っています。2022年8月に公開されたCICライブの一本で、老舗が3代100年を超えて続いてきた理由を当主自身の言葉で聞ける記録です。
なお「ちんや」の暖簾は、2021年8月に一度下りたあと、株式会社WDIが承継して2022年3月に浅草で再開しています。この記事では動画の内容とあわせて、そのいきさつも整理しておきます。
動画の見どころ
この回は番組「伝統はイノベーションの連続である」(CICライブ)として収録されたもので、概要欄に章立てのタイムスタンプは付いていません。そのため以下は、番組の趣旨にそって当主が語っている論点を箇条書きにしたものです。再生時間は51分30秒。
- 浅草で料理屋として始まった店が、なぜすき焼き専門店に転じたのか
- 「狆屋」という変わった屋号に込められた、江戸の商いのかたち
- すき焼きという料理において、店が何を自分たちの責任範囲と考えているか
- 代を継ぐとはどういうことか、家訓や受け継いできた考え方
- 老舗が時代ごとに変えてきたこと、変えなかったこと
ちんやとは — 創業は何年で、何代続いたのか
創業は明治13年(1880年)。浅草の地で料理屋として開業し、明治36年(1903年)にすき焼きの専門店となりました。動画に登場する住吉史彦さんは6代目ご当主です。昭和50年(1975年)には店舗建物が新築され、浅草の地で長く営業を続けてきました。
屋号の「ちんや」は、江戸時代にこの家が狆(ちん)などの愛玩動物を大名や豪商に納め、あわせて獣医の仕事もしていたことに由来します。「狆屋」と呼ばれていた屋号を、料理屋に転じたあとも仮名書きで残したわけです。犬を扱う店が牛肉の店になるという経歴は、業種をまたいで生き延びてきた老舗のありようをそのまま示しています。
2021年の閉店と、暖簾の承継
ちんやは2021年8月15日をもって営業を終えました。建物の老朽化、新型コロナウイルス感染症の影響、そして後継者がいないことが理由として説明されています。その直前の2021年8月13日、株式会社WDI(WDI GROUP)が「ちんや」の暖簾を承継することを発表しました。
そして2022年3月18日、東京都台東区花川戸に「ちんや 浅草本店」として再オープン。席数は個室3室を含む全74席です。創業の地である浅草で、142年の歴史を持つ屋号が再び灯ったことになります。動画で住吉さんが語っている内容は、この承継の前後にあたる時期の記録として読むと、いっそう重みが増します。
すき焼きという料理と、浅草という街
牛肉を食べる習慣が日本に広く根づいたのは明治以降です。明治5年(1872年)に明治天皇が牛肉を食したことが報じられ、それを機に牛肉食が一般へ広がっていったと一般に言われています。都市の路地には牛鍋屋が並び、やがて関東では割下で煮る形、関西では肉を鍋に焼きつけてから砂糖と醤油で味をつける形へと、地域ごとの流儀が分かれていきました。
浅草は、江戸期から浅草寺の門前町として賑わい、明治以降も劇場や映画館が集まる東京最大の歓楽街でした。芝居を観たあと、あるいは観音参りの帰りに肉を食べる — そうした都市の遊びの流れのなかに、すき焼き屋という業態は組み込まれていました。ちんやが料理屋からすき焼き専門店へ転じた明治36年という年は、まさに浅草がその賑わいを増していく時期にあたります。
同じ台東区には、やはり江戸から続く鍋の店が残っています。どぜう鍋の駒形どぜう、あわぜんざいの梅園など、浅草界隈は「一品で勝負する店」が密集した土地でもあります。神田のいせ源のあんこう鍋とあわせて読むと、東京の鍋文化の幅が見えてきます。
名物 — 「適サシ肉」という考え方
ちんやが掲げる肉の基準が「適サシ肉」です。商標登録されたこの言葉は、霜降り(サシ)が多ければよいという考え方をとらず、適度であることを重視するという意味を持ちます。公表されている基準では、脂肪の量が4等級であること、脂肪の融点やサシの入り方などの独自基準を満たすこと、30か月以上肥育した和牛のメス牛であることなどが挙げられています。
加熱したときに立つ「和牛香」を活かし、赤身の旨味と脂の甘味のつり合いをとる。食べ終えたあとに重さが残りにくい、という点も語られています。等級の数字を上へ追うのではなく、料理として最も具合のよいところを選ぶ — すき焼きという一皿に対する店の姿勢が、この言葉に凝縮されています。
買う・訪ねる
- 店舗:ちんや 浅草本店 — 東京都台東区花川戸2-16-1
- 電話:03-3841-0010
- 営業時間:平日 11:00〜15:00 / 16:30〜22:00、土日祝 11:00〜22:00(2022年3月の再オープン時の発表内容。来店前に公式サイトでご確認ください)
- 席数:全74席(個室3室を含む)
- 運営:株式会社WDI(WDI GROUP)
- 公式サイト:ちんや
- 老舗通販.net:ちんや のページ(2026年10月3日時点では掲載商品がありません。取扱は時期により変わります)
- このほか、精肉店「精肉ちんや」とお取り寄せについても公式サイトに案内があります
営業情報は2026年10月3日に公式サイトおよび運営会社の発表で確認したものです。変更される場合がありますので、ご利用の際は店舗にご確認ください。あわせて、母の日のプレゼントに贈りたい老舗の商品おすすめ12選でもちんやを取り上げています。
老舗フェスティバル2026について
agataJapanが企画・制作する「老舗フェスティバル2026 by agataJapan」は、2026年10月3日(土)10:00〜18:00、東京・日本橋の福徳の森と仲通り周辺(東京都中央区日本橋室町2-5-10)で開催されました。全国の老舗が集まる老舗マルシェ、奉納能、老舗サミットなどを通じて、3代100年以上続く老舗の品と技に触れられる一日です。
- 開催日時:2026年10月3日(土)10:00〜18:00
- 会場:福徳の森・仲通り周辺(東京都中央区日本橋室町2-5-10)
- 詳細:老舗フェスティバル2026 特設ページ
- チケット:老舗フェスティバル2026 チケット販売ページ
100年続く老舗の品を、お取り寄せで
「老舗通販.net」は、3代100年以上続く老舗だけが参加する通販サイトです。2010年の開設以来、全国の老舗の品を扱ってきました。遠方でお店に足を運べない方も、ここから取り寄せられます。
動画チャンネル「日本の老舗」について
この動画は、YouTubeチャンネル「日本の老舗」で公開されている番組「伝統はイノベーションの連続である」(CICライブ)の一本です。日本各地の文化と経済の中心である「老舗」をテーマに、3代100年続いてきた秘訣、伝統と革新、家訓など、普段あまり語られてこなかったことをご当主に伺う約45分のインタビュー番組です。
よくある質問
ちんやの創業は何年ですか
明治13年(1880年)に東京・浅草で料理屋として創業し、明治36年(1903年)にすき焼きの専門店となりました。
「ちんや」という屋号の由来は何ですか
江戸時代に狆(ちん)などの愛玩動物を大名や豪商に納め、獣医も兼ねていたことから「狆屋(ちんや)」と呼ばれたことに由来します。
ちんやは現在も営業していますか
2021年8月15日に一度閉店しましたが、株式会社WDIが暖簾を承継し、2022年3月18日に東京都台東区花川戸で「ちんや 浅草本店」として再オープンしています。
この記事は、YouTubeチャンネル「日本の老舗」の動画をもとに、動画で見る日本の老舗シリーズとして構成しました。東京都の老舗もあわせてご覧ください。
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