榮太樓總本鋪と総本家更科堀井の女性職人が登壇した老舗・ご当地サミットの動画サムネイル

若き技の担い手|榮太樓と更科堀井の女性職人が語る技の継承【動画】

老舗の技は、受け継ぐ人がいて初めて次の100年に届きます。2025年10月11日に日本橋で開かれた「老舗・ご当地サミット2025」の最終プログラムでは、創業1818年の菓子舗榮太樓總本鋪の和菓子職人・星加優里菜氏と、創業1789年のそば屋総本家更科堀井のそば打ち職人・川辺華菜氏という、20代・30代の女性職人の二人が登壇しました。

聞き手は「月刊日本橋」編集長の堺美貴氏。職人の道を選んだきっかけ、練り切りとそば打ちという全く違う技のむずかしさ、後輩に教える立場になってからの迷い、そして「この先どうしたいか」までを、24分52秒の動画で語り合っています。「老舗の跡取り」ではなく「現場で手を動かす職人」の言葉で老舗の継承を聞ける、めずらしい回です。

老舗・ご当地サミット「若き技の担い手」/老舗フェスティバル2025 by agataJapan(24分52秒)

動画の見どころ

動画の概要欄にある章立てに沿って、話の流れを整理しました。

  • 02:18 登壇者の自己紹介
  • 03:09 職人の道を選んだきっかけ
  • 06:54 榮太樓總本鋪・星加氏 — 和菓子「練り切り」制作の技術と苦労
  • 11:25 更科堀井・川辺氏 — そば打ちの技術と、女性職人としての挑戦
  • 14:46 仕事のやりがい・喜び
  • 17:15 指導の難しさと伝統への思い
  • 21:18 未来のビジョンと挑戦
  • 24:18 まとめ

登壇した二人の職人と聞き手

  • 星加 優里菜氏(株式会社榮太樓總本鋪 和菓子職人)
  • 川辺 華菜氏(株式会社更科堀井 そば打ち職人)
  • 堺 美貴氏(月刊日本橋 編集長/インタビュアー)

開催日は2025年10月11日(土)、会場は野村コンファレンスプラザ日本橋6F 大ホールです。肩書きはいずれも収録当時のものです。

榮太樓總本鋪とは — 創業は何年か

株式会社榮太樓總本鋪の創業は文政元年(1818年)。江戸時代に「日に千両を商う」と言われた日本橋魚河岸で働く人たちに愛された菓子屋として始まり、現在も日本橋に本店を置いています。会社としての設立は平成23年(2011年)11月、代表取締役社長は細田将己氏。本社は東京都中央区日本橋箱崎町14-2、工場は東京都八王子市七国にあります。全国和菓子協会・全国飴菓子工業協同組合・東都のれん会に加盟しています(公式サイトの会社案内で2026年11月1日に確認)。

看板商品は江戸から続く榮太樓飴と梅ぼ志飴、そして餡を黒文字で切り分ける名代金鍔。八代目・細田眞氏にうかがった菓子づくりの考え方は、榮太樓總本鋪の記事にまとめています。

総本家更科堀井とは — 創業は何年か

株式会社更科堀井の創業は寛政元年(1789年)。堀井家の伝えによれば、初代は信州特産の信濃布を商っていたのがそば屋に転じたもので、領主・保科家の江戸屋敷から程近い麻布永坂町に「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」の看板で店を構えました。「更科」という名は、信州そばの集散地だった更級の「級」の音に、保科家から許された「科」の字を当てたものと伝えられます。

明治半ばの最盛期には皇后や宮家へも出前を届け、さらしな粉の挽き方を改良したことも、この店の功績とされています。しかし昭和初期の恐慌から家産に陰りが見え、昭和16年(1941年)に一度廃業。戦後に再建されたものの外部資本の入った会社組織となり、「永坂更科」「布屋太兵衛」の登録商標は堀井家の手を離れました。昭和59年(1984年)12月、八代目・堀井良造氏が代々の地である麻布を離れず、麻布十番商店街の一角に「総本家更科堀井」を開きます(公式サイト「更科堀井の歴史」で2026年11月1日に確認。同ページは『そば・うどん』第31号/柴田書店、岩崎信也氏の執筆による)。

現在の代表者は堀井良教氏(九代目)、従業員はパート・アルバイトを含め118名。九代目にうかがった白いさらしなそばの打ち方は総本家更科堀井の記事でご覧いただけます。

なお、公式サイトも記しているとおり、麻布十番界隈にある他の「更科」はまったく別の経営です。当サイトで紹介している芝大門の更科布屋も、総本家更科堀井とは別の会社です。

背景を知る — 練り切りとさらしなそば、二つの技

練り切りとは

星加氏が語る練り切りは、正式には「練り切りあん」と呼ばれ、白餡に砂糖とつなぎを合わせて練った生地のことも、それで作った菓子のことも指します。上物は蒸して裏ごしした山の芋を砂糖と練り合わせ、並物は求肥をつなぎに使います。茶席では主菓子として出される上生菓子で、全国和菓子協会の分類では求肥・こなし・雪平とともに「練り物」に入ります。

特徴は、四季の移ろいをそのまま形にすることです。生地に食紅で色を付け、木型に詰めるか、指とへらだけで季節の意匠に仕上げます。砂糖と餡が広く手に入るようになった江戸後期には、すでに作られていました。つまり、動画で星加氏が「むずかしい」と語る手の感覚は、200年以上前から菓子職人が身体で受け渡してきたものだということになります。

さらしなそば(更科そば)とは

川辺氏が打つさらしなそばは、そばの実の中心部から最初に挽き出される一番粉を使います。中心から挽かれて出てくるため、後から出る粉に比べて白く、上品な香りを持ちます。ただし粘りがないのでつなぎをよく使う性質があり、だからこそ水回しと練りの加減がそのまま仕上がりに出ます。更科堀井の看板である変わりそばは、このさらしなそばに胡麻や海苔、抹茶、季節の素材を練り込んだもので、白い生地だからこそ色と香りが映えます。

同じ「老舗の技」でも、片方は餡を指先で季節の形にし、片方は粉と水の境目を手のひらで探る仕事です。動画の後半で二人の話が「教えること」の難しさに重なっていくのは、どちらも言葉にしにくい身体の記憶を伝える仕事だからでしょう。

職人の世界と技能の継承

和菓子もそば打ちも、長く男性中心の職場として語られてきました。動画のタイトルが「若き技の担い手」であり、副題に「若き女性職人たちの挑戦と情熱」と置かれているのは、その前提が現場から変わりつつあることを示しています。二人がそれぞれ入社のきっかけから話し始め、やがて後輩への指導で悩む話に行き着く流れは、老舗にとっての事業承継が、経営の話だけでなく現場の手仕事をどう残すかの問題でもあることを伝えています。

【おしらせ】榮太樓總本鋪 日本橋本店は再開発で仮店舗に移っています

動画に登場する榮太樓總本鋪の日本橋本店について、収録後に大きな動きがありました。日本橋地区の再開発にともない、2020年に改装した旧本店(東京都中央区日本橋1-2-5)は2026年3月31日の営業をもって一時閉店し、2026年4月15日から仮店舗(東京都中央区日本橋1-2-8)で営業を再開しています。跡地には2032年ごろに新しい本店が戻る予定で、安政4年(1857年)に日本橋へ店を構えてから169年ぶりの移転にあたります。

公式サイトの店舗情報(2026年11月1日確認)では、日本橋本店は東京都中央区日本橋1-2-8/電話 03-3271-7785/10:00〜18:00(月〜日)/年中無休(年始を除く)となっています。動画でふれられている本店の売り場の様子が仮店舗でどう続いているかは公式サイトに明記がないため、ご来店前に店舗にご確認ください。

買う・訪ねる

榮太樓總本鋪

  • 公式サイト:榮太樓總本鋪
  • 日本橋本店(仮店舗):東京都中央区日本橋1-2-8/電話 03-3271-7785/10:00〜18:00(月〜日)/年中無休(年始を除く)
  • お取り寄せ:老舗通販.net の榮太樓總本鋪のページ(2026年11月1日時点で榮太樓飴・果汁飴・ひとくち煉羊羹など5品)

総本家更科堀井

  • 公式サイト:総本家更科堀井
  • 麻布十番本店:東京都港区元麻布3-11-4/電話 03-3403-3401/平日は昼11:30〜15:30(L.O.15:00)・夜17:00〜20:30(L.O.20:00)、土日祝は11:00〜20:30(L.O.20:00)の通し営業
  • ほかに立川店(伊勢丹立川店8F)、日本橋高島屋店(新館6F)、十割そばの新店「更科堀井 青」(東京都港区虎ノ門2-2-3 マルシェ 虎ノ門アルセアタワー1F/電話 03-6459-1615)
  • お取り寄せ:老舗通販.net の総本家更科堀井のページ(2026年11月1日時点で半生更科そば・堀井そば・つゆなど20品以上)

営業時間・定休日はいずれも2026年11月1日に各公式サイトで確認したものです。変更されることがありますので、お出かけの前にご確認ください。

老舗フェスティバル2026 開催の御礼

この動画は2025年の「老舗・ご当地サミット」の記録です。あわせて、2026年10月3日に日本橋で開催した「老舗フェスティバル2026 by agataJapan」にも多くの方にお越しいただきました。ありがとうございました。当日の様子は#老舗フェスティバル・#老舗ウィークの投稿や老舗フェスティバルの記事一覧でご覧いただけます。

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