福岡県八女市の高橋商店は、1717年(享保2年)に造り酒屋を開業し、300年以上・19代にわたって蔵を受け継いできました。代表銘柄は「繁桝(しげます)」です。
その300年の酒蔵が、ESG評価——環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の視点で、自社の日本酒を数値で「見える化」することに挑みました。老舗フェスティバル2026「老舗・ご当地サミット」④では、八女市の担当者、十九代蔵元の中川拓也さん、九州大学発スタートアップaiESGのキーリー・アレクサンダー・竜太さんが登壇しました。
YouTubeチャンネル「日本の老舗」で公開したセミナー動画とあわせて、話の内容を紹介します。
収録:2026年10月3日 老舗フェスティバル2026(東京・日本橋)/再生時間:33分0秒
動画の見どころ
- 八女市が八女茶でESG評価を始めた理由
- 伝統本玉露は農林水産大臣賞26年連続
- aiESGはサプライチェーン全体の環境・人権リスクを評価する
- 気候変動が酒造りと酒米に与える影響
- 日本酒と白ワインを比べて見えたこと
- 結果を受けて「やっぱり米だ」——酒米づくりへ
チャプター
- 0:00 登壇者紹介
- 2:21 八女市がESG評価に取り組む理由
- 4:21 八女茶と伝統本玉露、八女の特産品
- 6:27 なぜ八女茶をESGで評価したのか
- 8:33 aiESGによる評価結果——中国の煎茶との比較
- 16:52 高橋商店の歩みと気候変動
- 20:59 日本酒でESG評価をやってみた
- 23:05 白ワインと比べてわかったこと
- 29:09 評価を受けて、米づくりへ
八女茶から始まったESG
八女市がESGに出会ったのは2025年度。600年の歴史を持つ八女茶を次の100年へつなぐため、生産者が当たり前にやってきたことを数値で示し、海外への「参入のパスポート」にしようと考えました。欧州などでは、サプライチェーンの環境・人権への影響を明らかにすることが、取引の前提になりつつあるからです。
aiESGの評価では、八女の煎茶は中国の煎茶と比べて温室効果ガスなどの環境負荷が小さく、労働に関わる社会的リスクも低いという結果が出ました。一方、伝統本玉露では窒素系物質の値がやや高く出ました。これは肥料をたっぷり使い、被覆して育てる丁寧な栽培の裏返し。数字とその背景のストーリーを一緒に伝えることが大切だ、とキーリーさんは話します。
日本酒でもやってみた
「八女茶にばかり予算がいくなら、日本酒でもやってよ」——中川さんは会場を笑わせながら、補助金を活用して八女の酒米「吟のさと」を使った自社の純米吟醸でESG評価に取り組んだ経緯を明かしました。
比較対象に選んだのは、海外の消費者になじみのある白ワイン。結果は、温室効果ガスや大気汚染物質、人権リスクの多くの項目で日本酒のほうが小さく、とくに社会面のリスクはすべての項目で大きく下回りました。一方で水の使用量は、原料米の栽培に集中していることがわかりました。これは米という原料の構造的な特徴で、だからこそ次に何をすべきかが見えてくる、という評価です。
「やっぱり米なんだ」
これまで中川さんは、輸出先やバイヤーに酒を説明するとき、精米歩合や麹、酵母といった造りの話を中心にしてきました。米づくりから手がける蔵を見ても「格好つけているのでは」と思っていた、と正直に語ります。
しかし評価結果を見て、「やっぱり米なんだ」と行き着いたそうです。気候変動で酒米が硬く割れやすくなっている不安もあるなか、本格的に米づくりに取り組む理由ができた——。「伝統を守るために革新していく」という言葉で、発表を締めくくりました。
買う・調べる
- 八女茶を取り寄せる:老舗通販.net「銘茶関口園 福岡銘茶 八女茶」
- 老舗のお酒を探す:老舗通販.net「老舗のお酒」
※高橋商店の「繁桝」は、老舗通販.netでは現在取り扱いがありません(2026年10月4日確認)。蔵元の公式サイトや取扱店でお求めください。
老舗フェスティバル2026について
agataJapanでは毎年、日本が世界に誇る老舗の技術と文化に触れられるイベント「老舗フェスティバル by agataJapan」を開催しています。2026年は10月3日(土)、日本橋の福徳の森・仲通り周辺で開催し、老舗・ご当地マルシェ、日本酒の飲み比べ、老舗サミットなどのセミナー、ステージパフォーマンスに多くの方にお越しいただきました。
- イベント詳細:老舗フェスティバル2026 by agataJapan
- 特設ページ:老舗通販.net 老舗フェスティバル2026特設ページ
- セミナー全編:老舗フェスティバル2026 セミナーアーカイブ(YouTube)
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YouTubeチャンネル「日本の老舗」
この動画を公開しているYouTubeチャンネル「日本の老舗」では、創業100年を超える老舗の当主へのインタビューや、老舗フェスティバルのセミナーを配信しています。ほかの回は動画で見る日本の老舗からご覧ください。
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