東京・新富町の大野屋總本店は、安永年間(1772年〜1780年)創業の和装雑貨店です。看板商品は「新富形(しんとみがた)の足袋」。あらゆるものが機械で大量生産される時代に、裁断から仕上げまですべてを店内の工房で手づくりしています。歌舞伎役者、舞踏家、能役者——足元を人に見られる仕事の人たちが、この店の足袋を履いてきました。動画では、七代目ご当主の福島茂雄さんが、その手仕事の中身を語ります。
動画の見どころ
全編11分24秒。この回には章立てのタイムスタンプが付いていないため、内容の流れで見どころをご紹介します。
- 立体裁断——客の足の形を測り、内側用・外側用・底用に左右あわせて10枚の布を断つ最初の工程。
- 足踏みミシンで縫う——縫う箇所にあわせて糸の太さを変えながら縫い合わせていく手つき。
- つま先の丸み——足の形に沿わせつつ丸く仕上げる、最も神経を使う部分。
- 木型と木槌——縫い目が足に当たって痛まないよう、木型にはめて叩いてならす仕上げ。
- 当主の考え方——「お客様の期待に、丁寧に応えていきたい」。手でつくり続ける理由がここに集約されます。
大野屋總本店の創業はいつか
創業は安永年間(1772年〜1780年)。子どものころから手先が器用だったという初代・福島美代吉が、三田で装束の仕立て屋を開いたのが始まりです。その技術は高く、薩摩藩の屋敷から御用を承るほどでした。三田から新富町に移転したのは嘉永2年(1849年)。明治の初めから中期にかけて、周辺に新富座(旧守田座)や歌舞伎座といった芝居小屋が建ち、芸者が集まる華やかな街になっていきます。その只中で、5代目・福太郎が新富形の足袋をつくり出しました。役者や芸者に愛用されたことで、大野屋の名は広く知られるようになります。現在のご当主は7代目・福島茂雄さんです。(出典:agataJapan.tokyo「大野屋總本店」/大野屋總本店公式サイト、2026年9月25日確認)
足袋という道具と、こはぜの数
足袋は、足首の内側をこはぜ(鞐)という留め具で受け糸に掛けて留めます。こはぜの枚数は4枚が標準で、枚数が増えるほど足首を高く覆うため、踊りや所作の多い場では5枚こはぜが選ばれることもあります。生地は丈夫な綿織物のキャラコが一般的。既製品はサイズの号数で選びますが、誂えの足袋は足の実寸だけでなく、甲の高さや指の形まで測って型を起こします。
大野屋總本店の足袋が役者や舞踏家に選ばれてきたのは、この「一人ひとりに合わせる」仕事が続いているからです。店先では足袋のほか、ハンカチ、手ぬぐい、割烹着なども扱い、コロナ禍にお客からの求めで作り始めたという綿ガーゼや麻のマスクも並びます。
新富町という土地
新富町は築地と銀座に挟まれた一角で、明治期には新富座を中心とした芝居町でした。劇場があれば役者がいて、役者がいれば衣装と履物の職人が集まります。大野屋總本店がこの地で足袋の店になっていったのは、町の成り立ちそのものと重なっています。国の登録有形文化財になっている木造の店舗は、その時代の空気を今に伝える建物です。
近隣の老舗では、饅頭の塩瀬総本家、銀座の和菓子萬年堂本店、日本橋の竺仙もこの連載で紹介しています。
買う・訪ねる
- 公式サイト:大野屋總本店
- お取り寄せ:老舗通販.net の大野屋總本店のページ
- 文字でも詳しく:agataJapan.tokyo の大野屋總本店
- 店舗:東京都中央区新富2-2-1/電話 03-3551-0896/営業時間 9:00〜17:00/定休日 土日祝(出典:agataJapan.tokyo、2026年9月25日確認。おでかけ前に公式サイトでご確認ください)
- エリアで探す:東京都の老舗/連載一覧:動画で見る日本の老舗
老舗フェスティバル2026 by agataJapan
日本橋の老舗が集まる一日、「老舗フェスティバル2026 by agataJapan」を開催します。東都のれん会をはじめ全国の老舗の逸品が並ぶマルシェ、伝統工芸のワークショップ、酒蔵の飲み比べ、当主が登壇する老舗サミット、特設ステージでのパフォーマンスなど。会場は福徳神社に隣接する福徳の森です。
- 日時:2026年10月3日(土)10:00〜18:00
- 会場:福徳の森・仲通り周辺(東京都中央区日本橋室町2-5-10)
- 入場:無料(飲食・セミナーなどは別途費用)
- 詳細:老舗フェスティバル2026 特設ページ
- チケット:老舗通販.net の特設ページ
よくある質問
大野屋總本店の創業はいつですか?
安永年間(1772年〜1780年)です。初代・福島美代吉が三田で装束の仕立て屋を開いたのが始まりで、嘉永2年(1849年)に新富町へ移りました。
「新富形の足袋」とはどんな足袋ですか?
5代目・福太郎がつくり出した形で、一般的な足袋より底の型を狭く採り、上から包み込むように覆うのが特徴です。足が細くきれいに見え、つま先をふっくら丸く仕上げるため長時間履いても痛くなりにくいとされます。
店はどこにありますか?
東京都中央区新富2-2-1です。東京メトロ有楽町線の新富町駅から徒歩3分ほど、国の登録有形文化財になっている木造建築が目印です。
チャンネル「日本の老舗」について
この動画は、スターマーク株式会社が運営するYouTubeチャンネル「日本の老舗」の連載「五つの奥義(The Five Inner Secrets)」の一本です。ナレーションはセイン・カミュさんが務めています。
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