【重要なお知らせ】海老屋總本舗は2025年に廃業しました。株式会社海老屋総本舗は2025年3月25日に営業を停止し、同年8月6日に東京地裁より破産開始決定を受けました。明治2年(1869年)の創業から156年の歴史に幕を下ろしています。以下の記事は在りし日の記録として、当主の語りと佃煮という食文化を残すために公開しているものです。商品の購入や来店はできません(2026年10月4日 追記)。
隅田川にかかる吾妻橋を浅草から渡ると、東京スカイツリーへ向かう道すがらに海老屋總本舗がありました。明治2年(1869年)創業の江戸前佃煮の老舗で、朝9時の開店と同時に詰め合わせを求める地元の客が続々と訪れる店でした。社是は「温故創新」。江戸前の辛口という常識を破った2代目、塩分を3割抑えた「若煮佃煮」を生んだ4代目と、代々「変える」ことで「変わらない味」を守ってきた店でした。
YouTubeチャンネル「日本の老舗」の【五つの奥義】シリーズでは、5代目ご当主の川北学さんが、150年続く佃煮屋の商いと佃煮のこれからを語っています。動画とあわせて、佃煮という食文化の背景と、海老屋總本舗の沿革・名物を整理しました。
公開日:2024年3月17日/再生時間:8分13秒
動画の見どころ
- 「変わらない味で勝負する」という言葉の意味——守るために何を変えてきたのか
- 江戸前佃煮の濃い味から、塩分を抑えた「若煮」へ舵を切った判断
- 佃煮=ご飯のおともという固定観念から抜け出すための新しい取り組み
- 百貨店や催事を通じて全国に名が知られるようになった経緯
- 5代目として、次の世代に何を残そうとしているのか
※この回の概要欄には章立てのタイムスタンプがないため、見どころを箇条書きで示しています。
海老屋總本舗とは——創業は何年か
創業は明治2年(1869年)。初代・川北三郎兵衛がエビやフナの加工販売を覚え、現在の吾妻橋付近に居を構えたのが始まりです。この土地を選んだのは、当時の隅田川で白魚・エビ・フナがよく獲れ、大消費地である浅草が近かったためでした。創業当時からの主力商品「えびの鬼がら焼」は、現在もおせちに入っています。
太平洋戦争の空襲で店舗・家屋が全焼しますが、昭和23年(1948年)に現在地へ本店を建て直して法人化。その後、百貨店への出店や催事での販売を通じて、老舗佃煮店として全国に名を知られるようになりました。現在の当主は5代目・川北学さんです。
「温故創新」——代ごとに味を更新してきた
海老屋總本舗の歩みは、社是「温故創新」そのものです。2代目当主の利助は、“江戸は辛口”が当たり前だった時代に関西で修業し、砂糖を加えた上方風の甘辛い味付けを確立しました。4代目当主の利雄は、戦後の健康意識の高まりを受けて塩分控えめの「若煮佃煮」を開発。いずれも当時の常識を外した商品で、映画監督の小津安二郎など文人墨客にも重宝されたと伝えられています。
5代目の川北さんの代では、辛味ブームを受けたピリ辛の「若煮唐辛子きくらげ」を令和4年(2022年)春に発売。さらに近所のアサヒビールとコラボレーションし、ワインと佃煮のマリアージュを提案するなど、佃煮の食べ方そのものを広げる試みを続けています。「佃煮は手軽にいただける副菜。忙しいときにも小皿でさっと出すだけで食卓が彩られます」(川北さん)。
そもそも佃煮とは何か——佃島から始まった保存食
佃煮の名は、東京・佃島に由来します。徳川家康が摂津国佃村(現在の大阪市西淀川区あたり)の漁師を江戸に招き、隅田川河口の干潟を埋め立ててできたのが佃島です。漁民たちは悪天候で漁に出られないときの食料や船内食として、小魚や貝類を塩や醤油で煮詰めて常備菜・保存食にしていました。これが佃煮の起源とされています。
やがて雑魚が大量に獲れるようになると製造が本格化し、保存性の高さと安さから江戸庶民に広まりました。参勤交代の武士が土産として持ち帰ったことで、全国にも伝わっていきます。本来の江戸前佃煮は辛口で味が濃く、夏場に常温でおにぎりや弁当に入れても傷まないほどの保存性が特徴でした。現代は減塩志向から薄味・冷蔵保存が主流になっており、海老屋總本舗の「若煮」はまさにその流れを先取りした商品といえます。(出典:Wikipedia「佃煮」、2026年9月27日確認)
海老屋總本舗の店を構える墨田区では、区内の付加価値の高い商品をブランド認証する「すみだモダン」(すみだ地域ブランド戦略、2009年開始/すみだ地域ブランド推進協議会)という取り組みがあります。若煮佃煮は平成24年(2012年)にこの認証を受けています。(出典:agataJapan.tokyo「海老屋總本舗」/すみだモダン公式サイト、2026年9月27日確認)
何が名物か——若煮佃煮シリーズ
- 若煮たらこ(972円)……「若煮」シリーズの一番人気。たらこは築地で冷蔵し、すべて手作業で食べやすい大きさにカット。噛めばほろほろと崩れる歯ざわりが特徴
- 若煮細切昆布(648円)……北海道産の昆布を使用。通常の佃煮より短時間で炊くため、後をひかない上品な味わいと噛みごたえ。おにぎりの具材にも
- 若煮きゃら蕗(540円)……蕗を短時間で少しあっさりめに煮詰め、蕗の香りと風味を生かした季節の一品
- えびの鬼がら焼……創業当時からの主力商品。現在もおせちに入っています
「若煮」シリーズは塩分量を従来の佃煮より3割程度抑えつつ、砂糖・醤油・水飴などで煮詰めて上品でコクのある味わいに仕上げたものです。ほかに細切昆布、あさり、しじみ、まぐろ旨煮など、箸が進む商品が揃っています。(価格はagataJapan.tokyo掲載時点のもの。2026年9月27日確認)
店舗と沿革の記録
- 本店:東京都墨田区吾妻橋1-15-5(2025年3月25日に営業を停止し、閉店しました)
- 法人:株式会社海老屋総本舗(墨田区両国2-18-4/1948年設立)。2025年8月6日、東京地裁より破産開始決定
- agataJapan.tokyoの紹介ページ
- 東京都の老舗
※公式サイト(www.ebiyasouhonpo.jp)は閲覧できません。この記事に記した商品や営業の情報は、営業していた当時のものです。現在は購入・来店はできません。破産の事実と日付は東京商工リサーチの公表情報(2025年8月6日 破産開始決定、2025年3月25日 営業停止)にもとづきます。
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老舗フェスティバル2026で全国の老舗に会える
agataJapanでは毎年、日本が世界に誇る老舗の技術と文化に触れられるイベント「老舗フェスティバル by agataJapan」を開催しています。2026年は日本橋で開催します。
- 日時:2026年10月3日(土)10:00〜18:00(予定)
- 会場:福徳の森・仲通り周辺(東京都中央区日本橋室町2-5-10)
- 入場:無料(飲食・セミナーなどは別途費用)
- 内容:老舗・ご当地マルシェ、伝統工芸ワークショップ、全国の酒蔵による日本酒の飲み比べ、老舗サミット、ステージパフォーマンスほか
- 詳細:老舗フェスティバル2026 by agataJapan
- チケット・特設ページ:老舗通販.net 老舗フェスティバル2026特設ページ
会場に隣接する福徳神社は、古くから商売繁盛の祈願で親しまれてきた神社です。老舗の逸品を手に取りながら、日本橋の歴史と文化に親しむ一日をお過ごしください。
YouTubeチャンネル「日本の老舗」
この動画を公開しているYouTubeチャンネル「日本の老舗」では、創業100年を超える老舗の当主に、老舗を老舗たらしめる「五つの奥義」を語ってもらうインタビューシリーズを配信しています。ほかの回は動画で見る日本の老舗からご覧ください。
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